Sansan Innovation Award 2020
Sansan Innovator

INTERVIEW

株式会社トヨコン

株式会社トヨコンは、愛知県豊川市に本社を置く物流のトータルソリューション企業。同社の浦部将典氏は、SansanやMAの導入・活用を通じて営業プロセスの改革に取り組みました。それまで当たり前だった仕事の進め方や会社の文化を変えた、同社の軌跡を追いました。

  • 株式会社トヨコン
  • 設立1964年9月
  • 従業員数199名(2021年7月時点)
  • 事業内容包装資材および物流機器販売、包装設計、システム開発、倉庫管理業務、梱包業務、組立事業
interview

受賞したことは、
自分にとって
すごく自信になりました

受賞企業代表
浦部 将典
経営管理部 人事広報課 課長

受賞後、ご自身を取り巻く環境や心境に変化はありましたか。

Sansan Innovation Awardを受賞したことは、自分にとってすごく自信になりました。「自分のやってきたことは間違っていなかった。このまま進んでいいんだ」と思えるようになりました。先日、普段は関わりのない現場の社員から「すごいことをしたんだね」と声を掛けてもらいました。単純に、すごく嬉しかったです。これまで「何をしているか分からない」と言われ続けてきた状況が変わって、「ああ、喜んでいいんだ」と思いました。

営業プロセスの改革に取り組み始めた2016年から受賞した2020年までの約4年間は、ずっと不安だったんです。社内にマーケティングというものが浸透し始めて、「問い合わせが増えた」「デジタル上で接点が生まれた」というような実感は自分の中にあったものの、実績というか、「会社全体に対して何かをした」という結果のようなものが足りないと感じていました。そんな中で、初めて社外から評価をいただけたことで、自分の取り組んできたことが結果に変わりました。今回の受賞は、会社の中に「何かが生まれた」瞬間だったと思っています。

なぜ会社に変化を起こそうと思ったのでしょうか。

営業を楽しい、楽な仕事にしたいという思いが、どこかにあったんだと思います。いわゆる「足で稼ぐ」というような営業スタイルに、ずっと疑問を感じていました。若手がいなかったこともあるかと思いますが、営業担当者がデジタルに弱い、ITに弱いというか、物理的な行動で仕事をしているということが多かったように思います。顧客を集めることも、顧客を育てていくことも、商談して受注につなげていくことも、営業が全部任されていました。

私自身が営業部門へ異動して一年半くらいがたった2015年に、社内で新規事業を考えるプロジェクトが発足され、私もメンバーの一人として参加しました。ブログとか、今で言うオウンドメディアみたいものを自社で立ち上げた方がいいんじゃないかというアイデアが、プロジェクトの出発点でした。ウェブ上で接点を持って、お客様に情報を提供する。こちらから情報を届けるというよりは、お客様のタイミングで情報収集をしていただく。そういったことを考えていく中で、プロジェクトは新規事業ではなく、SansanやMAを活用したマーケティング、営業プロセスの改革にチャレンジさせてほしいという内容になりました。

提案した当初は、経営陣のほぼ全員から反対されました。ただ、社長が「私の権限で承認する。彼らにやらせてみよう」と周囲を説得してくれたことで実行が決定しました。このときの社長の言葉は、本当に忘れられません。あの言葉があったからこそ、「この改革を絶対に成功させなければならない」という思いがすごく強くなったことを覚えています。

新しい習慣を作り、会社の文化を変えていく必要がありました

具体的には、どのようなことに取り組みましたか。

まずは、営業担当者との対面だけだったお客様との接点を増やすことに取り組みました。2016年にSansanを導入して、登録された名刺情報を基にメールマガジンを配信し、新たに開設したメディアサイトへと誘導するようなコンテンツマーケティングを展開しました。さらに、2017年にはMAも導入して、マーケティング活動で得られたデータをスコアリングして分析することができるようになり、ナーチャリングにも取り組めるようになりました。その結果、お客様からの問い合わせは約15倍になり、対売上目標も300%を達成することができました。

ただ、社内で理解や賛同を得ることは、本当に大変なことでした。最も苦労したのは、それまで当たり前だった担当者たちの仕事の進め方や習慣を変えることです。各拠点を回って、直接お願いすると、その直後は対応してくれるのですが、しばらくすると忘れられてしまう。新しい習慣を作り、会社の文化を変えていく必要がありました。新しい仕事のスタイルを理解して受け入れてもらうために、担当者たちに向けて月に2回以上の説明会を何度も繰り返し開催することで、直接顔を合わせて構想と情熱を伝え続けました。資料も若手向け、管理職向けと作り分け、結果的には60種類以上を用意しました。また、Sansanに名刺を登録してもらうために、名刺を登録するごとにポイントがたまり、その結果が人事考課表に載る仕組みも考案し、新しい制度を作るようなことにも取り組みました。

その難題を乗り越えさせた原動力は何でしたか。

一番の原動力は、会社を少しでも良くして、若い人が嫌々ではなく、笑って楽しくワクワクとした気持ちで仕事ができるような環境を作りたいという強い思いでした。そして、支えてくれる仲間がいたこと。最初は新規事業を企画するプロジェクトとして集まりましたが、最後まで一緒になって取り組んでくれた5人の存在は特に大きかったです。それぞれ得意分野や性格は違っても、同じ方向を向いて自由に議論できたことが、私に乗り越える力を与えてくれました。

DX(デジタルトランスフォーメーション)という、一つの変化を起こしていくために大切なことは、デジタルツールを導入して終わりにするのではなく、そのツールを入れた後に、それをどうやって使って文化を変えていくかだと思っています。そのためには、共感してくれる仲間が必要でしょうし、一緒に取り組んでくれる人って複数いないと、多分、文化は作れないんです。トヨコンも、きっと時代の流れに合わせて、文化を変えていったからこそ、55年続いているんじゃないかなと思っています。だから、これから文化がまた変わるんだろうなって思っています。

次はどんなチャレンジを考えていますか。

営業プロセスの改革、営業活動の可視化については、ある程度はできたと思っています。今後は、動画コンテンツやウェビナーなどを活用して、お客様が求めている情報を求められている形でより効果的に提供していきたいと考えています。商談のリモート化が進み、ウェブ会議ツールの活用も進んでいるので、オンライン名刺もしっかりと活用していきたいと考えています。

それらに加えて、お客様がトヨコンのサービスや商品に関心を持って、実際に購入・活用していただくという顧客体験の全て、CX(カスタマーエクスペリエンス)を可視化していきたいと考えています。CXをどこまで数値化できるか分かりませんが、リアルとデジタルを上手に活用することで、顧客満足度を向上させることにこれから挑戦していきたいです。

interview

変わっていくことに
ワクワク感を感じました

坂本 直也
営業部安城営業所 主任

営業プロセスの改革が始まったときの印象を教えてください。

浦部と一緒になって、プロジェクトに取り組んでいた当時は、購買課に所属し、仕入れ先の企業様とやりとりを担当していました。仕入れ先からいただいた情報は、それまでも営業担当者に伝えていましたが、その情報をお客様に伝えるかどうかは営業担当者が全て判断していたため、購買課から営業担当者に提供した情報がお客様にちゃんと届いているか、疑問を感じていました。各営業担当者の行動が見えなかった状態です。

トヨコンは、パソコンが普及したのも最近でして、「デジタル化」という言葉からは遠い状況にあったと思います。そういった背景もあって、正直なところ、現場ではなかなか変化を受け入れられず、何をすればいいか分からないという状況だったと思います。ただ、営業プロセスが改革されていくことに対しては、すごくワクワク感を感じたことを覚えています。

改革によって、仕事はどのように変わりましたか。

メールマガジンをはじめとする情報発信がきっかけになって、お客様から問い合わせをいただくことが増えました。また、新規のお客様も増えてきた実感はあります。私は、2020年から異動して、営業を担当していますが、配信されたメールマガジンから問い合わせがあって、実際に受注に至ったこともあります。情報を必要としているお客様に必要な情報をちゃんと提供できているという実感があります。

一番の変化は、デジタルツールを使って、一人ひとりがいろいろな情報を活用し、お客様に最適な働き掛けができるようになったことだと思います。Sansanを確認すれば、自分が残した情報や前任者が残した情報をいつでも見直すことができます。自分の頭の中、各営業担当者の頭の中に入っていたものがデータとして残されていることによって、営業における提案の幅が広がったことを感じています。お客様とも、より深い関係を築けるようになりました。

お客様を知ることが、提案をする上で重要になってくるので、今後はデータを蓄積していくことがますます必要になると思います。営業プロセスを改革したことによる手応えはすごく感じています。営業はもちろんですが、さまざまな面で会社全体として積極的にDXに対して取り組むべきだと考えています。

上)営業担当者の訪問や行動が社内で共有されるように変わった。左)下)取引先企業に社員を常駐させ、工場内で梱包作業を行う。

interview

成果を振り返るのではなく、
もっと先へ進んでいきたい

乾 利尚
営業部 物流企画課 課長

営業の課題は解決されましたか。

私は、浦部や坂本と一緒になって、改革プロジェクトを進めたメンバーの一人でした。私が最年長だったので、みんなが自由に意見を言い合える雰囲気作りと、全体を俯瞰してプロジェクトをいい方向に導くことを心掛けていたように思います。

当時の営業スタイルは戦略的ではなく、完全な個人プレイだったと思います。営業担当者が自分で訪問先をリストアップした上で、電話で連絡するなり、直接訪問するなりして話をさせていただくという手法が主流でした。確立された方法がなく、結果が出なかったとしても原因が分からず、うまくいっている人と伸び悩む人の差も広がっていくような状況でしたし、人材育成面でも問題があったように思います。そういった営業スタイルには限界と課題を感じていたので、1から10まで全部を営業担当者がやらなくていいような分業の体制、戦略的なチームプレイができる体制を取れないかと、当時は考えていました。

営業プロセスの改革に取り組んだことによって、少なからず効果は出てきているなと思っています。自分が所属する課では、Sansanを活用することで、営業活動に関するデータ分析ができるようになって、うまくいかなかったときのボトルネックがどこにあるのかを見つけられるようになりました。また、数値結果をはじめとした判断材料をそろえられるようになったことで、営業戦略を立てることはもちろん、社内で計画を説明したときに周囲から納得を得やすくなりました。

社員の行動や働き方に変化を感じますか。

私が所属する課では、インサイドセールス、フィールドセールスといった形で営業の業務を分業して、マーケティングから始まる新しい形の営業を目指していこうと取り組んでいるところです。また、新入社員の育成においても、インサイドセールスで経験を積ませて、お客様のニーズや課題を引き出せるようになってからフィールドセールスを担当してもらうような仕組み作りも検討しています。当時のプロジェクトがなかったら、こういう考えに行き着くこともなかったのかもしれないと思います。

ツールに関する社員の理解度も上がってきています。「ツールの活用」と言ってしまえばそれまでですが、これまでそういったツールを活用することさえできなかったメンバーたちが、ツールを活用しながら新しいことに取り組めていることは変化だと感じています。成果も上がっているとは思いますが、その成果に対して満足することはなく、「もっとできることがあるんじゃないか」という気持ちの方が強いです。いろいろと物事を進めていく中で、新たな障壁が出てきたりもしているので、成果を振り返るのではなく、もっともっと先に進んでいきたいなと考えています。

上)梱包する商品に合わせて一から資材を設計。右)業界の動向やサービスに関連する新しい技術は社員間で共有する。上)梱包する商品に合わせて一から資材を設計。下)業界の動向やサービスに関連する新しい技術は社員間で共有する。

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会社が変わってきたことを
社員のみんなが実感しています

明石 耕作
代表取締役社長

ここまで会社が変わると思いましたか。

正直なところ、ここまでのことになるとは思っていませんでした。当時はDXなんて言葉は聞いたこともなく、営業プロセスの改革を提案されたときには、役員会のメンバーから「必要はあるのか」「他社の事例はないのか」といった反対や疑念の声が挙がりました。しかし、浦部たちは、それでも負けずに内容を熱心に練り直して、毎月のように新しい提案を持ってきました。必ず成功するという確信はありませんでしたが、彼らの思いに賛成できるのは私しかいないと思い、ゴーサインを出しました。決め手となったのは、彼らの自主性と熱意でした。

営業プロセスの改革に取り組んだ結果、新規のお客様からのお問い合わせは格段に増えました。売上をはじめとした数値面での効果も実感していますが、これほどの大手企業からいきなり引き合いが来るのかと驚くケースも多いです。また、コロナ禍にあって、お客様に対面でお会いすることが難しくなっていた中であっても、新規のお客様の数が減っていないことにも驚いています。今では、若手の社員が当たり前のようにツールを使って仕事をしていますし、5年前と比べると女性の営業担当者が増えてきました。足で稼ぐような営業スタイルではなく、新しい営業スタイルで仕事ができるようになったことで、女性がより活躍できるようになってきています。

最後に、今後の展望を教えてください。

デジタルの力によって、私たちのような地方の中小企業に世界中のいろいろな企業様とつながれるチャンスが訪れたと思っています。本当に素晴らしい時代になってきました。これまでと変わらず縁の下の力持ちとして、これからも幅広いお客様と多数の接点を持ちながら、価値を提供していきたいと考えています。

私たちがお客様に提供する一番の価値は、大切な商品をお客様が届けたい先にしっかり届けることだと考えています。部品メーカーのお客様であっても、商品そのものを作っているお客様であっても、その価値は変わりません。「お客様が欲しいものは、段ボールではない」という話をすることがあるのですが、お客様にとって宝物である商品を安全・確実に届けてほしいというのがお客様の願いであり、その要望に対して現状において最適な提案が段ボールだっただけであって、私たちの使命は商品を安全・確実に届けることです。

2014年に創業50周年を迎えるに当たって、新たに経営理念を作り直し、「価値の共創」という言葉を掲げました。これからも、お客様、社員、そして社会と共に「新たな価値を創ること」を目指して参ります。そして、お客様の声に対して真摯に向き合いながら、一緒に新しい価値を生み出していくためにも、DXを一層進めていきたいと思います。今回の取り組みによって、会社が変わってきたことは、私だけでなく社員のみんなが実感していると思います。高いモチベーションを持った社員と力を合わせて、これからも新しい文化を作っていきたいです。

  • ※ ページ上の内容は2021年7月時点の情報です。