Sansan Innovation Award 2022
Sansan Innovator

INTERVIEW

鈴与株式会社

1801年の創業以来、静岡県を拠点として、物流を核に多様な事業を展開してきた鈴与株式会社。国内外で合わせて約140社のグループ会社を持つ同社がSansanの導入を通じて目指したのは、グループ全体で活用する顧客データベースの構築とDX推進です。各社への地道かつ積極的な働き掛けの結果、グループ50社での活用を実現。グループ内でシナジー効果を最大化する情報共有の文化を生み出しました。現在も、地元企業に強い影響力を持つ老舗企業としてDX推進に取り組み続けています。

  • 鈴与株式会社
  • 設立1936年(創業:1801年)
  • 従業員数974人(グループ全体:約1万2800人)
  • 事業内容運送事業、通関業、海運貨物取扱業、製造業ほか
interview

営業DXの推進を通して、
グループ会社間で
横のつながりが強まりました

受賞企業代表
田中 壮一
鈴与株式会社
データソリューション事業部 課長

受賞した感想をお聞かせください。

取り組みの成果を認めていただいたことをとてもありがたく思っています。受賞をきっかけに、知人から連絡をもらったり、今までになかった問い合わせやお客様から新たなお問い合わせをいただいたりといった反響もあり、うれしかったですね。

これまでに、グループ会社のうち、Sansanの利用対象として定めた企業の8割に及ぶ50社での導入を完了しましたが、今回の受賞はグループ各社の協力があったからこそだと思っています。

今回の取り組みのきっかけについて教えてください。

物流業界において、人手不足は長年抱えている課題です。弊社では、「聖域なきデジタル化」の方針の下、人にしかできない業務にリソースを割き、注力していくため、ルーティン業務のシステム化やAIの活用、物流センターでのロボット導入など、さまざまなデジタル化の取り組みを進めてきました。その一翼を担うものとして推進したのが、営業活動の標準化ツールとしてのSansanの導入です。

当初、Sansanを導入していたのは鈴与株式会社だけでしたが、Sansanを鈴与グループ各社にも導入しようという流れになりました。最初にグループ全体の営業DXの推進を任された時は、正直なところ「えっ、自分が?」と驚きました。しかし、手探りではありましたが、前向きに捉えて取り組みを進めた結果、従業員それぞれの名刺管理業務が省力化されただけでなく、グループ内での顧客情報の共有が進み、グループ会社間の連携が強化されるという大きな成果が生まれました。

Sansanの導入に消極的な担当者との面談を重ね、「やらない理由」を明確にして解決法を探る。地道な取り組みが実を結んだ。

特に注力したことや苦労したことはありますか。

グループ各社でSansanの利用を定着させるために、まず毎月開催している「グループIT推進会議」で、各社にSansanの導入を要請しました。グループ会社とはいえ、各社にはそれぞれの考え方や特徴があり、かけられる予算も一律ではありません。なかなか導入に至らない会社もありましたが、そこで諦めずに、各社の担当者約100名と面談を重ねていきました。

振り返れば、日頃の営業活動と同様、こうして地道に活動してきたことが、今回の取り組みが成果を上げるに至った最大のポイントだったと思います。

取り組みによってどのような変化が起きましたか。

作業の効率化はもちろんですが、やはり大きかったのは、社内だけでなく、グループ会社間で横のつながりを深めていく効果があったことでしょうか。私自身、鈴与株式会社のデータソリューション事業部で、主にクラウドサービスを販売していますが、グループ会社間の連携の希薄さと、営業活動がグループ内で標準化できていないという状況は以前から気にかかっていました。同じお客様に対して、グループ各社の担当者が別々に営業しているケースも多々あり、140社を超えるグループ会社が持つリソースのメリットが発揮されていないことに、もったいなさを感じていたのです。

グループ会社間での情報のやり取りが活発になったことで、営業手法の幅は確実に広がっています。例えば、われわれのグループ会社に医療卸会社がありますが、その営業活動においては、病院の建築に関する情報が大きな鍵となります。Sansanを活用することによって、グループ内の建築会社から関連情報を早期に入手でき、営業に生かされた例が報告されています。鈴与グループの人材派遣会社がグループ会社の取引先の情報を営業に活用するといった事例もありました。

このような、グループ間の連携が営業を後押しする事例の増加は、グループ各社がそれぞれの企業活動の成果を活用できるものとして捉える意識が高まってきた証しだと思っています。

今後はどのようなことを実現したいですか。

グループ企業間のつながりは実感できるようになりましたが、まだ十分とはいえません。今後、鈴与グループとしての営業効率をさらに上げるため、各人の利用を一定レベルまで引き上げるなど、Sansanを活用することについてさらなる標準化を進めていきたいと考えています。この取り組みが進めば、グループ企業がいることのスケールメリットを感じる機会はさらに増えていくでしょう。

そして、静岡県に本社を置き、220年以上の歴史を持つ老舗企業として、県内、さらには全国の地方企業の規範となれるように、DXを進めていきたいと思います。

interview

営業で話す内容が変わり、
お客様との関係を
築きやすくなりました

望⽉ ⼀磨
株式会社TUMIX
マーケティンググループリーダー

取り組み前はどのような状況でしたか。

鈴与グループの1社であるTUMIXのマーケティングリーダーとして、全国の運送会社を対象に、クラウド型業務支援システムの営業や製品開発の企画、営業促進のためのプロモーション活動などを担当しています。導入前は、グループ会社間でお客様の情報が共有できておらず、ターゲットの選定やアプローチに時間がかかっていました。グループ会社間であれ、お客様の情報は気軽に交換できるものではありませんから、互いに気を遣う部分も大きかったと思います。

取り組みにより、どのような変化がありましたか。

今は、該当のお客様にすでにコンタクトを取っている担当者がグループ内にいれば、すぐに分かります。それまではとにかく社内の力だけで戦うという意識でしたが、グループ会社の担当者にヒアリングしたり、そこからアプローチまでしてもらったりと発想を切り替えられるようになりました。誰がいつ名刺を交換したか、どういう経緯でアプローチしたかといった情報が分かれば、お客様との関係においてより良い提案のストーリーも見えてきます。そうすれば、自ずと話す内容も変わりますし、お客様が受ける印象も変わるはずです。お客様との関係は明らかに築きやすくなりました。

当社のお客様は、主に全国の運送会社です。グループ会社がお付き合いしている運送会社も、当社のお客様になる可能性があります。自分たちで一から関係を築いていくのと、すでにグループで関係を持っている企業や担当者にアプローチするのとでは、労力も負荷も大きく異なります。周りの人も「その方が楽だよね」という感想を持っています。そして、私たちだけでなく、お客様もこれまでとの違いを感じられていると思います。私が知る限り、ここまで大きな変化はなかったように思いますし、導入前のことを思い返すと「よくあれで営業できていたな」と感じますね。

過去にアプローチした顧客の情報や商談の履歴も管理できるため、休眠顧客の掘り起こしも容易になったという。

DXに対する社内の考え方も変化していますか。

今でこそ、みんなが名刺をスキャンして情報を活用することが当たり前になりましたが、当初はなかなかそうした方法に慣れない社員もいました。それが、蓄積された情報を共有できるようになるにつれ、みんながDXのメリットに気付きはじめたように感じます。

DXで効率が上がり、便利になることは、これまでの体験から明らかです。アナログな作業の削減や点在するデータの集約など、課題はまだまだありますが、今回の取り組みとシステム化によって業務を集約管理しようという機運は高まっていると思います。

interview

蓄積されていくデータが
営業活動の財産になっています

坂森 美保
鈴与商事株式会社
オフィスソリューション営業部

DXによってどのようなことが実現できていますか

現在、鈴与グループの鈴与商事で法人のお客様向けにデジタルツールを活用した業務の効率化やコスト削減のお手伝いをしています。初めてのお客様への営業の際には、まずSansanで、社内やグループ会社の誰かが名刺交換をしていないかを確認し、履歴があれば、お客様がDXにご興味をお持ちかどうかといった情報を事前に把握するようにしています。また、お客様の役職が変わられたことなどが自動で通知されるため、その情報を基にお祝いの品をお持ちすることもあります。

私が入社した時にはすでにSansanが導入されていたこともあり、Sansanなしの営業は考えられません。導入前はどのように情報を入手していたのか、と不思議に思うほどです。もしSansanを導入していなかったら、とても的外れな提案をしているのではないかと思いますね。

メールマガジンの配信といったデジタルマーケティングにもSansanを活用。今後はその成果を分析し、ターゲティングの精度も上げたいという。

社内において、意識の変化を感じますか。

社内の他部署やグループ会社から情報の提供を受けたり、逆にこちらから情報を共有したりすることで、営業の幅は確実に広がっていると思います。例えば、これまで福祉業界との取引は実現できていなかったのですが、グループ内の福祉レンタル企業からの紹介で提案に結び付きました。グループ会社から「営業に同席させてほしい」といった話をもらうことも増えています。特にここ1、2年でグループ内でのSansanの導入が進み、蓄積されたデータが財産となっていることを強く感じるようになりました。今後、さらにグループ全体での導入が進めば、ますます人脈を広げていけるはずです。自社だけでなく、他のグループ会社の営業担当者とも情報共有することを続けていければと思っています。

今後は、どのような働き方をしたいですか。

私自身、お客様にDX推進を提案する立場ですので、自分たちがアナログな働き方をしているままでは、自信を持って商品をお薦めすることも、効果的なご提案もできません。お客様に寄り添ったご提案をするためにも、自分たちがDXで楽になったという成功体験を重ねていきたいです。

また、営業の仕事は、お客様とお会いするのが第一歩。お話を聞き、ご要望に添ったご提案を準備する時間を少しでも長く確保するためには、事務作業のような時間を短縮することが不可欠です。こうした意味でも、社内でのDXをさらに進めていければと思っています。

interview

歴史ある会社こそ
求められるのが変化。
DX推進は必然でした

原 健⼆
鈴与株式会社
データソリューション事業部 部⻑

取り組みの背景を教えてください。

鈴与株式会社は、静岡県を中心に日本だけでなく世界各地に拠点を持つ総合物流企業です。1801年創業という長い歴史を持つ会社で、清水港の沖合に停泊した船と陸を行き来して荷物を運ぶ「荷役」から、物流を中核に倉庫や運輸、エネルギー、製造、建設などさまざまな分野に事業を拡大してきました。

一方、歴史が古いが故に、会社の仕組みの中に昔からの流れを引きずっている部分があったことも事実です。世の中が大きく変わる中、技術も進歩します。当然、私たち自身も変わっていかなくてはなりません。特に、これから少子高齢化が進む中で、労働集約的な物流の仕事は今まで以上に生産性を上げていく必要があります。こうした状況に強い危機感を抱いた経営陣は、「聖域なきデジタル化」という方針を掲げ、強固な意志を持ってDXを推進してきました。

取り組みを振り返ってどのようなことを感じられていますか。

大事なのは、DXで自分の仕事が楽になった、何かの役に立ったという実感を一つずつ積み重ねることだと思っています。Sansanの導入は、日々の名刺管理の効率化や、グループ内の情報共有といった効果を通して、こうした実感を得やすい取り組みでした。ここから、また次のステップに進む際のハードルを低くしてくれたようにも感じます。グループ内にも、常に変化し、新しいことに取り組んでいかなくてはいけないという意識が生まれてきています。

今後の展望をお聞かせください。

鈴与グループには、これまで脈々と息づいてきた「共生(ともいき)」という言葉があります。これは私たちの経営の拠り所となる考え方で、「会社がひとつの企業として自立し、また、社員一人ひとりも個々の社会人として真に自立し社会活動を営む中で、我々と地域社会、お客様、お取引先様、そして社員相互間を結びつける精神的な基盤となる」ものとして、グループ全体に根付いています。

私たちが220年の歴史を刻むことができた理由は、常に社会から必要としていただける存在になるために、時代の変化に対応し自己努力を重ねて、お客様に高い価値を提供することを目指してきたからだと考えています。

また、「共生」という言葉には、お客様との関係だけでなく、従業員やその家族との関係も含まれます。働きやすさや働きがいという部分で日本一を目指す我が社にとって、まだまだ多い「作業」に当たる仕事をできるだけなくし、一人ひとりの時間がより有効に使われる環境を作っていくことも大事なことだと考えています。

220年を超える鈴与の歴史の中で、私たちの先輩は社会や環境の変化に応じて自身を変化させてきたはずです。この先、さらに長く歴史をつなげていくため、これからもDX推進に取り組んでいきたいと思います。

  • ※ ページ上の内容は2023年4月時点の情報です。