Sansan Innovation Award 2025
Contract One Innovator
INTERVIEW
- 双日テックイノベーション株式会社
- 設立1969年
- 従業員数単体:782名、連結:939名(2025年8月1日時点)
- 事業内容国内外の最新ソリューションによるネットワーク・ITインフラ構築、システム開発、運用・保守などのサービス提供、およびデジタルトランスフォーメーション支援

業務が効率化しただけでなく、
全社で契約書に向き合う
姿勢が生まれました
全社で契約書に向き合う
姿勢が生まれました
受賞企業代表
石村 武 氏
コーポレート統括本部
財経・リスク管理部 副部長
兼 リスク管理課 課長
今回の受賞についての感想をお聞かせください。
正直、とてもうれしかったです。社外から評価いただいたことで、われわれが進めてきたDXの取り組みが間違っていなかったと確信できました。私はコーポレート統括本部で、与信管理、法務、コンプライアンスという、会社のリスク管理全般を担っていますが、バックオフィス部門であるわれわれの業務は、売り上げを直接的に生み出すわけではないので、こうした賞をいただく機会はなかなかありません。そういった点でも大変うれしかったですね。
Contract Oneのユーザーとして初の受賞であることも光栄に思います。契約書は、法務だけが理解していればよいものではありません。Contract One導入により、コーポレートサイドの業務が効率化しただけでなく、事業部サイドの契約書に対する理解が進み、全社的にビジネスの根幹である契約書に積極的に向き合う姿勢が生まれました。これは当社にとって重要な変化だったと感じて います。


DXを推進し、リスク管理体制を強化。Contract Oneユーザーとしては初のSansan Innovation Award受賞企業となった。
取り組みの経緯を教えてください。
全社を挙げて生産性の向上を目指すセールスイネーブルメントの流れの中で、どうすれば事業部をサポートできるかがコーポレートサイドの至上命題でした。まずは自分たちの業務から効率化し、それが事業部に良い影響を与える。そういった改革を考えた時、注目したのが契約書です。当社が行っているビジネスにおいて、提供する製品の仕入れ先もいるため、当社と売り先のお客様だけで完結するものはほぼありません。売り先に対する義務と、仕入れ先に対する権利の差分が、両者の間にいる当社の責任となり、リスクになります。
たとえば、契約条件において仕入れ先から著作権を移転する権利は当社にはないが、売り先との契約では「著作権を移転する」と決められていた場合、当社は売り先との契約が履行できません。そうい った差分がないかを確認するため、当社では、売り先と仕入れ先それぞれの契約書を比較して、リスク分析表を作成します。
以前は、この業務に非常に多くの時間が費やされていました。リスク分析表は事業部が作り、法務担当者がそれを確認します。われわれは日々契約書に触れているので理解も早いのですが、事業部はそもそもそうした機会が多くはありません。そのため、事業部のメンバーが売り先、仕入れ先両方との契約書を読み込み、それぞれの契約条文からリスク分析に必要な項目を抜き出すのは時間がかかる上、正しい項目が抜き出されていないことも少なくなく、法務担当者と事業部との間で多くのやり取りが発生していたのです。
また、従来の契約書管理システムでは、そもそも該当の契約書を探し出すのにも時間がかかっていました。契約書が見つかっても、覚書を重ねているため、契約条件が最新の内容かどうかわからないケースもありました。PDFで保管されているだけなので、契約書の本文を検索することもできません。契約書は事業部、法務の両部門が関わるため、契約書に関する作業の効率を上げるためにContract Oneを導入しました。
各社の義務や権利がすべて記載される契約書を理解することは取引の基本です。既存のお客様へ新たな提案する際も取引条件をしっかり把握しておく必要があります。Contract Oneの導入には、作業効率の向上だけでなく、契約書そのものに対する事業部の理解を深められるという期待もありました。
日々の業務はどのように変わりましたか。
初めに契約した契約書とそれに連なる覚書が一元管理されことで、目的の契約書に迅速にたどり着けるようになりました。そして、Contract One AIの機能を活用することでリスク分析表の作成が迅速かつ正確になりました。以前は事業部からの問い合わせへの対応に多くの時間を割いていましたが、事業部の契約書への理解が進んだことで、問い合わせが減っただけでなく、問い合わせの内容も一歩進んだものになっています。
導入にあたっては、この取り組みが成功した未来についての認識をチームメンバーに共有することを重視しました。目的を把握して目線を合わせることで同じ方向に進めますし、やらされているという認識ではなく、納得して取り組むことで個々のモチベーションも上がります。説明会では、Contract Oneの基本的な使い方だけでなく、リスク分析表の作成にどう活用できるかについても説明しました。これが事業部のメンバーに響いたのではないでしょうか。定量的なところで言えば、リスク分析表の作成に要する作業時間が20%ほど短縮されました。
また、コンプライアンスについてもより強化しました。反社会的勢力との取引を行わないようにする方法はいろいろありますが、新規取引の申請時に取引先にそうしたリスクがないかチェックするのでは、すでに取引が決まっていることが多く、タイミングが遅い。営業DXサービス「Sansan」で、名刺を交換したタ イミングでリスクがないかチェックし、早いタイミングでアラートを出せる仕組みができたことも大きな変化だと思います。


社員の意識にはどのような変化がありましたか。
取引において契約書は避けて通れないものです。しかし、実際はトラブル発生時など、特別な時にしか意識しないものだったと思います。その契約書への意識が、今回の取り組みで変化しました。目的の契約書が容易に見つかる。かつその内容が理解しやすい。こうした環境ができたことで、契約書が身近になり、全社的に契約書に向き合う機会が増えたと思います。
今回の取り組みによって、エンジニアのように専門知識を持たなくても、ITツールやAIの活用で自らの業務を効率化し、質を上げられることがわかりました。コーポレートの業務が効率化すれば、必ず営業にもいい効果が現れると信じ、今後も新たなツールやAIを業務に積極的に取り入れ、業務改善に取り組んでいきたいと思っています。



法務担当者と事業部の
契約書に対する
目線がそろってきた
契約書に対する
目線がそろってきた
山形 かおり氏
コーポレート統括本部
財経・リスク管理部 リスク管理課
弁護士
取り組みの前にはどのような課題がありましたか。
私は、リスク管理課の法務チームで、契約書のチェックや契約リスク分析などの法務業務を担当しています。具体的には、事業部から依頼のあった契約書を確認し、当社に不利な条件などがあれば修正を入れるといった業務です。
事業部が作成したリスク分析表の確認や修正、事業部とのコミュニケーションといった対応に時間を要していたことに加え、契約書の格納にも時間がかかっていました。契約情報の登録は手入力が基本で、登録後に目視でチェックするなど、アナログな作業でした。検索もしづらく、目的の契約書になかなかたどり着けないこともありました。長年の取引がある取引先は多くの契約書が存在するため、社名で検索をかけた後、一つひとつ内容を確認して目的の契約書を探す必要がありました。
取り組み後の変化をどう感じていらっしゃいますか。
Contract One導入後は、自動で契約管理台帳ができるようになり、格納時間が減り、内容も正確になりました。割合で言うと登録作業の工数が60%、年間300時間ほど削減できたことになります。検索が容易になったことも大きな変化です。契約書の全文もデータ化され、テキスト検索できるようになりました。最近、当社の資本金が変更され、通知が必要な取引先を洗い出す必要があったのですが、その際も、条文を全文検索できたため、迅速に対応でき、便利さを実感しました。
多くの時間を割いていたリスク分析の作業時間も大幅に短縮されました。Contract One AIを活用すれば、リスク分析の際に特定の条項を簡単に探し出せます。文言が完全に一致していなくても、似た意味の条項を教えてくれることもあります。事業部が作成するリスク分析表の精度が上がったことで、それを確認する法務担当の作業時間も削減されました。以前は、事業部からの依頼が立て込むと、残業しても間に合わず、期限を延ばしてもらうこともあったのですが、今は1日にこなす件数が増え、忙しい時期でも、あまり残業をしなくてもよくなりました。
また、事業部からの問い合わせに対する回答も早くなったと思います。こうして生まれた時間を、業務改善のための作業などに充てられるようになりました。作業時間が短縮されただけでなく、リスク分析業務に対する心理的なハードルも下がったように感じますね。もう以前の環境には戻れません。


周囲の変化も感じますか。
同じ法務チームの中では「すごく楽になった」という声をよく聞きますね。事業部の変化も大きいと感じています。契約書は、普段は使わないような言い回しで書かれているので、慣れていないと理解しにくいと思いますが、Contract One AIで、契約書を要約したりチャットボット形式でやりとりをしたりすることで、理解度が上がり、契約書に対する意識自体が変わったのではないでしょうか。自ら契約書を検索する人が増えたように感じます。契約書に対する目線もそろってきています。
企業における取引は、すべて契約条件に基づいて行われているものなので、取引の中で何かしらのトラブルがあった際、見るべき契約書に事業部の担当者自らがたどり着ければ早い解決につながります。「お客様にこう言われたが、契約はどうなっているか」という相談と、「契約書にはこう書いてあるが、どうなのか」という相談では、まったく違いますよね。事業部の一人ひとりが、自分たちの取引がどのような契約に基づいているのかについて、さらに理解を深めてくれるといいなと思っています。



契約書への苦手意識が減り、
リスクに向き合う意識が
変わりました
リスクに向き合う意識が
変わりました
遠藤 優 氏
クラウドソリューション事業本部
ワークプレイス事業部 一課
以前は、どのような課題がありましたか。
私はワークプレイス事業部で、営業の見積もりの作成支援や、契約書の内容を確認して、それを営業にフィードバックするといった営業支援を行っています。こうした業務の中で最も負担に感じていたのが、契約書のリスク分析でした。特に大変だったのが、リスク分析表に当てはまる項目を探すことです。契約書の文言は、同じ内容でも当社と取引先で表現が異なるケースが少なくありません。もともと法務の知識があったわけではないので判断が難しく、その都度、担当部署や法務チームに確認をするなどのやりとりが多く発生していたのです。
業務はどのように変化しましたか。
まさかこんなに時間が短縮できるなんて、すごく驚いています。以前は、二つの契約書を上から下まで交互に読み、照らし合わせるという作業を何度も繰り返していたのですが、それが1回で済むようになりました。また、細かい文言が違っても、Contract One AIを使えば、同じ意味の文言を抜き出して提案してくれるので、体感としては、作業時間が半分になった感覚です。そもそも、当社の場合は取引先が多く、たくさんの契約書を取り扱っているため、保管されている契約書の中から目的の契約書を探し出すのもひと苦労でしたが、契約書自体が探しやすくなったことも大きな変化です。
何より契約書の理解が進んだことで法務チームとの意思疎通ができるようになり、やりとり自体がスムーズになったと感じています。リスク分析にかかる時間が短くなったことで、契約締結までのリードタイムも、これまで1週間から10日ほどかかっていたものが半分程度になったのではないでしょうか。これからも業務の効率化を図っていけたらと思っています。


Contract OneのAIを活用したチャット型検索で、確認したい条項を抽出。リスク分析表の作成にかかる時間を大幅に短縮できた。
意識の変化について感じていることはありますか。
リス ク分析表を作成する際、これまでは、「あぁ、やらなきゃ……」という重い気持ちで臨んでいたのが、今は「よし、やろう!」という前向きな気持ちで取り組めるようになりました。もともと取引上のリスクは何か確認しようという意識はありましたが、これまでは、時間に追われて、正直なところ、ある程度のところで折り合いをつけていました。今は、時間にも気持ちにも余裕ができたことで、リスクに対して能動的に向き合えていると感じています。対応をしながら得たノウハウで、営業担当者にリスクの指摘もできるようになりました。
営業担当者も契約書の確認に費やしていた時間が削減されたことを大きなメリットと感じていると思います。また、契約書に対して苦手意識を持っていた人が多かったのですが、やりとりを通して、営業担当者の中でも契約書が身近な存在になってきているのを感じます。同時に、営業担当者一人ひとりがもっと契約書に親しみ、契約書に対する苦手意識をなくしてくれたらいいなとも思っています。ツールを上手く使えば、必要な答えが得られるということを伝えていきたいですね。



ITで未来を切り拓くべく、
これからも先陣を切って
DXを推進します
これからも先陣を切って
DXを推進します
榎本 瑞樹 氏
コーポレート統括本部
エグゼクティブ・ディレクター
ブランドマーケティング推進室 室長
今回の受賞についてどう受け止められましたか。
非常にうれしかったですね。失敗なく普通にできて当たり前というのがコーポレート機能。そのため、コーポレートサイドがこうした賞をいただくチャンスはなかなかありません。今回の取り組みが評価されたことで、メンバーのモチベーションも上がり、DX推進の機運もさらに高まったと感じています。
Contract Oneユーザーとしての受賞にも意味があったと思います。ビジネスの基本は、お客様との大事な接点となる契約書です。ただ、営業サイドには、どうしても「契約書にまつわる作業は面倒」という意識があります。契約書に関する作業が効率化されたことで、契約書を重要視する意識が高まったことは、会社にとって大きなプラスになったと思います。


取り組みを振り返ってどう感じられていますか。
当社は、1969年の創業以来、アメリカのスタートアップを中心に数多くのグローバルパートナーと協業し、お客様のイノベーションに貢献してきました。2024年7月には、社名を日商エレクトロニクス株式会社から双日テックイノベーション株式会社に変更し、双日グループのIT中核事業会社として新たなスタートを切っています。
この社名変更を契機に次のステージに進もうと取り組んできたのが、データドリブン経営による生産性向上です。コーポレートサイドでは、営業改革、いわゆるセールスイネーブルメントに取り組む事業部を下支えするため、業務効率化によるコーポレート機能向上の取り組みを始めました。Contract Oneの導入は、リスク管理部門のDXを推し進めるとともに、共通言語によるファクトベースでの判断や、契約書に関するナレッジの共有など、データドリブン経営を進める重要な第一歩になったと思っています。
今後の展望について教えてください。
私は、DXを「歯磨き」のようなものにしないといけないと考えています。つまり、日常に溶け込ませるということです。われわれは、お客様のイノベーションに貢献する立場です。今回導入したサービスに限らず、まずはさまざまなサービスをわれわれが使いこなし、そのノウハウをお客様に展開していきたいと思っています。そう考えた時、コーポレートのバックオフィス部門がリスク管理部門のDXに率先して取り組んだことは、大きな意味のあることだったと思います。
社名変更をきっかけに掲げた「ITで未来を切り拓く先駆者」というビジョン、そして「お客さまが歩む先の道を照らし、次の未来をともにつくる」という提供価値、それぞれに近づくべく、これからもわれわれ自身が先陣を切ってDX推進に取り組み続けていきたいです。


- ※ ページ上の内容は2025年8月時点の情報です。