Sansan Innovation Award 2023
Sansan Innovator

INTERVIEW

日本通運株式会社

明治時代に設立された陸運元会社を母体とし、1937年に国策会社として創業した日本通運株式会社。以来、国内外問わず、陸、海、空、あらゆるルートを組み合わせた最適なロジスティクスを実現すべく発展してきました。新時代の営業ニーズに応えるべく、経営層のコミットメントにより、全社の4000名を超える営業担当者を巻き込み「データドリブン営業マネジメント変革」の実行に着手。現在では、約5000名、約1350の部署がSansanでつながり、データを活用した提案型営業に取り組んでいます。さらに、蓄積したデータを基に営業戦略を発展させ、企業文化の変革につなげる挑戦も行っています。

  • 日本通運株式会社
  • 創業1937年
  • 従業員数3万4299名(※2024年1月5日現在)
  • 事業内容自動車輸送、鉄道利用輸送、海上輸送、船舶利用輸送、利用航空輸送、倉庫、旅行、通関、重量品・プラントの輸送・建設、特殊輸送、情報処理・解析などの物流事業全般 および関連事業
interview

5000人の営業担当者が
リアルタイムで情報を共有できる
仕組みを構築できました

受賞企業代表
高木 彩圭
日本通運株式会社 営業戦略本部
セールスイネーブルメント部
ナレッジセンター 課長

受賞を振り返ってみていかがですか。

貴重な経験をさせていただき、大変光栄に思っています。今回の受賞対象となった取り組みは、もともと営業部門の取締役がトップダウンでSansanの導入を決め、進めていったものでした。当時、私は九州営業部におり、九州ブロックの推進担当者として、九州の各事業所における業務の効率化やDXの推進に取り組みました。今回の受賞は、自分自身がやってきたことを改めて振り返る良い機会になったと思います。

弊社のような多くの社員を抱える会社で、約5000人の営業担当者に対して短期間で運用を定着させられたことを誇りに思っています。社内外を含めてたくさんの方に取り組みを知っていただく機会にもなりました。

取り組み前の状況を教えてください。

弊社では日々の営業活動において、営業担当者間で情報の共有がなかなかされていないという状況がずっと課題になっていました。営業に関する情報は、個人の手帳やパソコン、あるいは頭の中だけに蓄積されており、人によって情報の格差が生じていたのです。

また、情報共有を紙で行う文化もまだ残っており、営業レポートを紙で作成して回覧することにより、そのレポートが支店長に届くのは1カ月後になってしまうといった状況も発生していました。それでは、情報の鮮度が落ちてしまいます。さらに、時代や環境の変化に伴って、お客様のニーズも多様化しており、それに対応することも必要でした。特にコロナ禍を経てからは、今までのようにお客様と簡単にお会いすることができなくなり、ますます営業における情報の必要性や、データ共有の大切さを感じていました。

そのため、必要な情報を、必要な時に、必要な形で取り出すことができるように、情報を蓄積して共有できるプラットフォームを作ることに全社で取り組んでいくことが決まり、それを叶える最適なツールとしてSansanを導入しました。

セールスイネーブルメント部では営業担当者全員が売れるようになる仕組み作りを主導。新しい営業スタイルを推進し、現場への支援を行っている。

社内での導入推進に当たり、工夫したことはありますか。

新しいツールを導入する時は、どんな組織でも最初は抵抗を感じる人がいるものだと思います。特に弊社のような従業員数の多い会社で、何百人、何千人に対してツールを定着させていくことは簡単なことではありません。

それが達成できたのは、経営層によるコミットメントがあったことが一つのポイントだったと思います。その上で、「なぜそのツールを使うのか」「使うことによって、営業活動にどんな変化をもたらすのか」といった、導入の目的を浸透させることを最も大切にしていました。

「使ってください」と言うだけでは、なかなか定着はしません。DXを推進するに当たって、一方通行にならないように、営業担当者に直接意見を聞く機会を設けて、双方向でコミュニケーションを取って使っていくことができるように心がけています。説明会を企画し、単純な機能紹介や使い方のレクチャーにとどまらず、「何のためにこのツールを使うのか」という目的を共有することを重視していました。そうすることで、自分ごととして理解してもらえたのが大きかったと感じています。

取り組みによって社内にはどんな変化が起きましたか。

Sansanの利用が定着し、約5000人の営業担当者が営業情報をリアルタイムに共有するという仕組みを構築することができました。「もうSansan見た?」「この情報、Sansanに登録しておこうね」というように、組織をまたいで「Sansan」は共通言語になっていますし、日々当たり前に活用できるようになっています。

担当者が営業活動を行った後は、おおよそ翌日までには商談履歴を登録します。フォローしている同僚が新しい内容を登録すると、Sansanから通知が来て、それを見に行くというような行動が取れるようになっています。また、管理職にとっては、部下の営業活動の内容がすぐに確認できる即時性が喜ばれており、もっとSansanを活用していこうという意識が高まっているように思います。

もともと、大きな変化が起こりやすい時代にあって、「このままじゃダメだよね」という危機感は誰もが持っていたと思います。時代の変化に後押しされる形でDXに取り組んだことで、「変わっていくぞ」という方向に社員の意識が変化したことが最も大きな成果だと思っています。2023年1月にセールスイネーブルメント部が新設されたことも、そうした変革の表れだと捉えています。

約5000人の営業担当者をSansanでつなぎ、導入から約4年で130万件以上の顧客情報を蓄積・共有。営業力強化につなげた。

今後、実現していきたい、新たなDXの取り組みはありますか。

約4000人からスタートしたSansanのユーザー数は、現在約5000人に達し、約1350の部署が、Sansanの中でつながっています。導入から約4年で、130万件以上もの顧客情報を蓄積することができています。今後は、その蓄積した情報を共有したり、より効果的に活用するということに取り組んでいきたいです。

130万件の顧客情報の中には、現在それぞれのお客様が抱えている課題に関するキーワードが潜んでいるはずです。業界・業種の特徴や、時代背景も反映されたキーワードを抽出したり、可視化したりできれば、より営業効率が上がるのではないかと思っています。

弊社の営業は、かつては「売りたいものを売る」というようなスタイルでした。お客様の声を聞いて、お客様のニーズに応えるような提案をする営業はあまりできていませんでしたが、Sansanの活用によって、営業DXが定着したことで、提案型営業を実現するための一歩を踏み出すことができました。

営業担当者が、Sansanをフルに活用しながら、自分の営業スタイルを振り返った時に、「昔より営業が楽しくなったな」「なんだか営業が楽になったな」という実感を得てもらえるように、セールスイネーブルメント部としても取り組みを続けていきたいです。

interview

時間を有効活用でき、
幅広く、質の高い提案が
できるようになりました

横山 智行
日本通運株式会社 関東甲信越ブロック
ロジスティクスビジネスユニット
営業開発部 次長

働き方にどのような変化があったか教えてください。

時間のロスをかなり削減することができるようになりました。

私の所属する営業開発部では、新規ロジスティクスサービスの構築を行っています。さまざまな輸送方法と拠点となる倉庫を組み合わせながら、国際物流と国内物流をつなぐ商品・サービスを開発しているのですが、そのためには業界・顧客の最新動向を踏まえて戦略を練ることが大切です。Sansan導入前は、お客様の情報を調べることに多くの時間を要していました。

連絡先を調べるには手持ちの名刺を探す必要がありましたし、お客様の情報を得るために自ら主体的に動いて社内の担当者に確認していました。しかし、導入後はお客様の情報が自動的に入ってくるようになり、こちらから聞きに行く必要もなく、こちらに確認が来ることも減りました。

また、以前はチームからフィードバックをもらうためには営業レポートを作成し、その共有のために会議を開く必要がありました。しかし現在は、営業活動を行った後、Sansanでその都度、商談の情報を共有することが日常になっています。わざわざ営業レポートを作成する手間や、レポートの共有のための営業会議を開く必要がなくなりました。商談中にメモを取る際に使うこともあるため、かなり迅速に営業に関する情報を共有できるようになったと思います。

営業活動で得た顧客情報は個人で管理せず、Sansanで記録・共有することをルールにしたことで大幅に業務が効率化。

営業の現場にいる社員として、DXの取り組みをどのように捉えていますか。

ツールを新たに導入する時は、われわれ現場のユーザー側も、ツール導入の目的が何なのかを理解していなければ、うまく活用することができません。

私自身も、新たなツールに対して戸惑いを覚えたことがありますが、使い方と目的がしっかりと理解できてくると、「これは業務を大きく効率化してくれるものなんだ」と理解して正しく使うようになるため、営業の生産性が上がる効果を実感できるのだと思います。

マネジメントを行う立場としては、チームメンバーが入力した情報に対してアドバイスや修正の指示を行ったり、叱咤激励をしたりする場としてもSansanが活用できていますし、質の高いコミュニケーションを取るのに役立っています。また、倉庫で働く現場の作業員ともSansanで得たお客様の情報を連携するといったコミュニケーションも生まれています。

さらに、時間を有効活用できるようになったと思います。ツールを活用することで多角的にお客様の情報を把握できるようになり、今まではなかなか手が届かなかったところにもアプローチができるようになりました。例えば、他の営業チームがセールスしている領域を取り入れて、お客様に対してより幅広い提案ができるようにもなってきています。広く、そして深くお客様の情報を捉えられるようになったことで提案力も上がり、コミュニケーションの量も増え、お客様にも喜んでいただけていると思います。今後もぜひ、新しい提案をするために時間を使っていきたいです。

interview

社内での情報交換が増え、
支店やチームを越えて連携して
営業活動に臨んでいます

加賀谷 葵
日本通運株式会社 営業戦略本部
ライフスタイル営業部 主任

ご自身や、周りの方の働き方の変化について、具体的に教えてください。

私が所属するライフスタイル営業部では、お客様の課題解決のためのご提案をしており、そのためには入念な情報収集と事前準備が必要です。しかし、これまでは自分が知っている情報だけでお客様にご提案することも多く、「社内に有用な情報があるかもしれないのに、自分の動き方は、本当に正しいのだろうか」と思うこともありました。

Sansan導入後は、営業の動き方が大きく変わりました。以前は、全国各地にいる営業担当者間のつながりが希薄だったように思います。それが今は、Sansanを見に行けば、社内で行われている営業活動に関する情報を得ることができるようになり、社内での横のつながりが強化されたことはもちろん、支店間での交流も増えました。

自分の身近な範囲だけでは知り得なかった、遠い関係性のチームの人たちが取り組んでいる営業活動についてSansanで知って、私自身の業務に生かすこともできますし、自分が書いた営業レポートをSansanで共有することで、他の営業担当者からコメントをもらうこともあります。情報の共有や活用がとても早くできるようになりました。

また、直属の上司をはじめ、過去に一緒にお仕事をしたことがある方からコメントやアドバイスをいただけると、心強く感じます。さらに、まったく関わりのなかった人から「こちらの支店で行っている取り組みの参考にさせていただきます」といったコメントをいただいたこともあり、お互いに情報交換をすることで、より考えを深めて質の高い提案ができるようになってきていると思います。

Sansanで他支店のベテラン社員が若手社員の商談履歴を見てコメントするなど、支店横断での社内コミュニケーションが活性化。

個人として、またチームとして、導入の効果をどのように感じていますか。

以前は、「DX」という言葉になじみがない方や、一歩引いた目で見てしまう方もいたと思うのですが、最近では意識が変わってきているのを感じます。Sansanをはじめとするデジタルツールは、もはや当たり前の存在になっています。また、同じ営業担当者でも、ベテラン社員と新入社員ではやはり能力の差があります。しかし、Sansanを活用することで、営業成績の良い方の手法を参考にすることもできます。

例えば、Sansanには細かい商談の内容やメモが蓄積されているので、他の社員の商談履歴を見て、「次の商談でこの話題を出してみよう」といった新しいアイデアが生まれる可能性があります。以前は、隣のチームの営業担当者が、お客様とどういった話をしているのか細かい内容まで知ることはできませんでした。現在は、ある案件に対して、別のチームの営業担当者が反応して「自分が担当しているお客様とこういうコラボレーションができるのではないか」と連携して新しい提案を行うこともできるようになりました。

営業の提案力が上がったと感じていますし、情報の共有がより身近に、当たり前になってきたと思います。今後もSansanを活用していきながら、今感じている横のつながりをさらに強化して、お客様にとって有意義なご提案をしていきたいです。

interview

データを使いながら
営業マネジメント全体を変え、
企業文化の変革にもつなげたい

古江 忠博
NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社
専務執行役員
グローバル事業本部長

改めて一連の取り組みを振り返ってみて、いかがですか。

今回の営業DXは、われわれ日本通運の中でも、特に営業に従事する社員一人ひとりが情報に価値を見いだし、情報を使っていくという行動パターンを作り上げる「データドリブン営業マネジメント変革」の一環として取り組みました。

弊社では、実は2009年にSFAツールを導入したものの、うまく浸透せず失敗してしまった苦い経験があります。そのときは「SFAツールを使う」ことが目的化してしまっていたことが原因でした。ですから、DXはあくまでもツール、手段であって、目的は、営業マネジメント全体を、データを使いながら変革していくことだという点を重視し、それを共有することを意識しました。

2022年よりデータドリブン営業マネジメント変革を推進。顧客の「ありたい姿」から逆算して提案する営業スタイルに進化させた。

短期間で実現できたポイントはどんなところにあると思われますか。

弊社のような規模の会社では、何か新しいことをやるとなれば、抵抗勢力や、無関心層がいるのは当然のことです。「コストをかけるだけの効果はあるのか」「本当にやる意味はあるのか」と思った人もいたと思います。しかし、即時的なリターンはなくても、長期的な視点に立ってメリットがあると信じて、投資として、とにかく使うんだという強い気持ちを持って進めました。

まずは各支店の支店長や部長といった管理職の社員を動かし、率先してSansanに自らの行動を登録したり、部下が登録した情報に対してすべからく目を通して適切なアドバイスやコメント、指示を出すなど、積極的に使ってもらうところからスタートさせました。

実際の現場では、最初は抵抗もありましたが、使い始めれば少しずつ操作にも慣れ、便利であることを実感できたため、どんどん活用が加速し、スムーズに浸透していったと思います。

今回の取り組みをどのように捉えていますか。

Sansanの導入に当たっては、全国の支店や営業所をブロックに分けて、各ブロックに推進担当者を配置しました。高木は九州ブロック担当として、Sansanをいかに浸透させていくかに向き合い、しっかり取り組みを行っていました。彼女が実際に手を動かした結果として得た揺るぎない実績が評価されたことを、本当にうれしく思っています。

今回の取り組みを通して、特に若い社員の仕事に対するモチベーションが、大きく変わってきたことも実感しています。Sansan上では所属する組織に関係なく、そして上司・部下関係なくコメントが飛び交っています。私を含めた役員が直接コメントを残すことも多々あり、フラットで風通しの良い組織になりつつあります。

今後の展望を教えてください。

日本通運株式会社は、国内ではナンバーワンの総合物流会社として、物流全般に取り組んでいます。2022年1月にホールディング体制に移行し、グループ会社の中でも主たる事業会社となっています。2037年に創立100周年を迎えますが、長期ビジョンである「グローバル市場で存在感を持つロジスティクスカンパニー」を実現するために、さまざまな企業変革に取り組んでいるところです。特に営業部門においては、営業生産性を高めるために、データドリブン営業マネジメント変革という、データを重視した、営業DXへの取り組みというものを進めています。

今回のDXの取り組みはその一環ですが、結果として、長期ビジョンの実現や業績拡大に近づいているのかなと感じています。こうした取り組みを、最終的には「企業文化を変える」というところまでつなげていきたいです。

日本通運は、成り立ちが半官半民の国策会社ということもあり、自ら提案しにいこうという意識は薄いところがありました。しかし現在、お客様のニーズは多様化しており、自ら営業して、事業を成長させていくセールスドリブンな意識を持たなければなりません。

新たな長期経営計画の中では「顧客志向」がキーワードになっています。お客様のあるべき姿、ありたい姿というものについて、しっかりとお客様ともコミュニケーションを取りながら、一つひとつ解決すべき課題を見いだして、それに対して当社として提供できるソリューションを設計し、提案をしていくことを目指しています。お客様との関係性を深めていき、関係性の深さを定量的に評価する方法を具現化する、そういった取り組みに着手していきたいと考えています。

  • ※ ページ上の内容は2024年6月時点の情報です。