Sansan Innovation Award 2024
Sansan Innovator

INTERVIEW

日本通運株式会社

アジアをリードする総合物流企業として幅広いサービスを展開する日本通運株式会社は、Sansanに蓄積された膨大な顧客データを活用し、「企業リレーションスコア」「ヒートマップ」などのデータ可視化の取り組みを開始しました。顧客との関係性を定量的に測れるようにすることで、案件獲得の精度向上や営業の効率化を実現。顧客の課題を深く理解しながら、データを基にした質の高い提案を行い、顧客志向の強化を推進しています。

  • 日本通運株式会社
  • 設立1937年
  • 従業員数3万4299名(2024年1月5日現在)
  • 事業内容自動車輸送、鉄道利用輸送、海上輸送、船舶利用輸送、利用航空輸送、倉庫、旅行、通関、重量品・プラントの輸送・建設、特殊輸送、情報処理・解析などの物流事業全般および関連事業
interview

関係性を可視化し、
顧客志向の営業強化に
挑戦し続けます

受賞企業代表
佐々⽊ 彩乃
⽇本通運株式会社
アカウントセールス本部
セールスイネーブルメント部 係⻑

Sansanを活用した営業DXの取り組みについて教えてください。

私は2023年に新設されたセールスイネーブルメント部に所属し、全国の営業パーソンが楽に、楽しく働ける仕組みづくりを推進しています。

当社では2021年にSansanを導入し、営業DXの取り組みを本格化しました。これにより、さまざまな情報を社内で共有する文化が根付いたことはもちろん、12万社、63万人分の顧客データがSansanに蓄積され、営業活動の基盤が整備されました。この膨大なデータを活用するために、2024年にはSFAを導入し、顧客の購買意思決定プロセスに対応した営業手法を型として定義。適切なタイミングで顧客に情報の提供や提案を行える体制を構築し、営業活動をさらに効率化しました。

営業の型を定義した結果、案件獲得の見通しの精度が格段に向上しました。これまで見通しの精度には課題がありましたが、現在では各フェーズにおける進捗状況が明確になり、パイプラインを管理できるようになっています。案件獲得率が向上するだけでなく、経営判断に役立つデータも蓄積されています。

Sansan Innovation Awardを受賞した取り組みは、どのようなものですか。

営業手法の型化と同様に、アカウントマネジメントを推進する上で参考とするために、「企業リレーションスコア」と「ヒートマップ」を開発しました。Sansanに蓄積された名刺情報や接点の数から顧客との関係性を算出し、数値で可視化する取り組みです。

会社の方針として、顧客志向を経営計画に重点戦略として記載し、これまで以上に強化することになり、営業部門はアカウントマネジメントの進化を目指すことになりました。そこで、成果の上がる営業戦略を感覚的なものにとどめず、実証するために作成したのが「企業リレーションスコア」です。役職に応じた指数と名刺交換枚数から数値を算出したものですが、この数値と売上との相関関係が確認されたため、今後、営業戦略の立案やアカウントプランの策定における具体的な指標になると考えています。「ヒートマップ」は、お客様と当社の社員との接点について、それぞれの役職に応じた指数から関係性の深さを測る指標です。ヒートマップのホワイトスペースを基に、次にアプローチするべき相手を見つけ、戦略的にアカウントマネジメントを推進することに活用できればと思っています。

物流が単なるコストから経営課題へと変わる中、顧客志向で課題を解決するためには、お客様のサプライチェーンの「End to End」でソリューションを提案していく必要があります。営業部門に限らずチームとして顧客に対応し、営業の手法も時代に合わせて進化させていく。そこに役立つツールや仕組みを提供するのがセールスイネーブルメント部の役割だと認識し、日々取り組んでいます。

お客様の視点で、お客様のビジネスの成功を考えて寄り添う、まさに「顧客志向」の営業スタイルの確立を目指している。

受賞してみていかがでしたか。

2023年に受賞した取り組みは、Sansanの定着に関するものでした。2024年はまったく異なる切り口でのチャレンジになりましたが、その内容が評価され、2年連続で受賞することができました。この結果は大変うれしく思っています。

連続受賞を目指していたわけではなかったのですが、社内からは大きな期待が寄せられており、締め切りギリギリまで資料作成に向き合ってのエントリーでした。受賞後の社内では、祝福の声をかけてもらうだけでなく、セールスイネーブルメント部の取り組みに関する認知が広がり、部門の意義を伝える良い機会になったと感じています。

取り組みの効果を実感しづらい中では、社内アンケートで寄せられる「売上だけでなくエンゲージメントも向上している」という声が励みになっていました。また、私は営業経験が短く、営業活動に苦手意識を持っています。だからこそ、若い世代が楽に、楽しく営業できることを大切にしながら取り組みを推進してきたことが、今回の成果につながったのではないかと思います。

受賞後のイベント登壇では、「企業リレーションスコア」「ヒートマップ」を含む4つの指標を紹介。参加者に新たな視点を提供した。

貴社のセールスイネーブルメントにおける展望を教えてください。

当社には約5000人の営業パーソンがいますが、彼らが蓄積した営業情報のデータには、まだ活用の余地があると感じています。今後はそのデータをフル活用し、営業の型を変革していくことで、個人の感覚に頼らず誰でも営業できる仕組みを作っていきたいです。チームとして一定の高い品質で営業できてこそ、一社一社に寄り添った顧客志向の営業が実現できるはずです。

AI活用によるプロセスの自動化も、同時に進めていきたいです。例えば「ヒートマップ」には手作業の部分がありますが、人が担う部分と機械に頼る部分を役割分担すれば、営業DXを加速できると確信しています。

ただし、DXは単なる手段に過ぎません。どう活用するかがポイントで、お客様に寄り添い、お客様のビジネスの成功に貢献するという本質的な目的を見失わないことが大切だと思っています。お客様との関係性をさまざまな角度から可視化して、関係性をより深めていくことで、チームNXとしての価値提供のレベルをアップしていきたいです。

interview

アカウントマネジメントの推進に
欠かせない指標になりそうです

奥平 幸三
⽇本通運株式会社
執行役員 アカウントセールスビジネスユニット⻑

担当業務と、営業DXとの関わりについて教えてください。

私が担当しているのはアカウントマネジメントを推進する組織で、営業活動を通して顧客志向を実現するために発足しました。従来の組織が国際輸送・国内輸送・倉庫といった事業単位だったのに対し、顧客ごとの事業所を設立して専門チームを作り、顧客のニーズや組織を深く理解した上でサポートを提供しています。

2024年1月には、ユニクロをはじめとしてグローバルに事業を展開する株式会社ファーストリテイリング様の事業所を設立しました。お客様の展開スピードが非常に速いので、そのスピードや考え方に伴走することが目的です。お客様を理解していく中で、従業員が働きやすい職場となることを常に考え実行されていることや、障がい者雇用に積極的に取り組まれていることが分かりました。そこで、サステナビリティの取り組みの一つとして当社が始めた「誰にもやさしい倉庫」プロジェクトへの協力を提案し、賛同を得ました。

「誰にもやさしい倉庫」は、DX機器の導入や職場環境の整備を通じて、倉庫で働くことが難しかった方々の障壁を取り除くことを目指す取り組みです。こうした新しい取り組みに一緒に挑戦していただけるのは、お客様との関係をしっかり構築できているからだと思います。かつては物流担当の方としかお話しする機会がありませんでしたが、サプライチェーンに関わる他部門の方ともお話しするようになり、物流以外の取り組みへの理解が深まりました。

このように顧客ごとへの対応を深めていく中で、次に提案する企業を見つけるために参照しているのが、Sansanのデータです。顧客との関係性を定性・定量の両面から把握できるという意味で、非常に効果的だと思っています。

「誰にもやさしい倉庫」には次世代型電動モビリティを導入。高さを調整できる車椅子で、歩行困難者のピッキング作業を可能にした。

受賞した取り組みを含む営業DXについて、考えをお聞かせください。

アカウントマネジメントを推進していく中で、「企業リレーションスコア」や「ヒートマップ」は欠かせない指標になると思います。

「企業リレーションスコア」を活用すれば、お客様との関係性をどれだけ築けているかを簡単に把握することができます。これまでは誰と誰が会ったという事実でしかなかったものがスコアとして算出されるため、改善点を見つけやすくなり、次のアクションにつながります。

「ヒートマップ」では、お客様の事業や拠点ごとに、自社の事業や組織がどれだけ接点を持っているかを可視化できます。新たなビジネスチャンスがどのエリアにあるのかを見極めたり、ホワイトスペースを発掘したりできるため、営業戦略の立案や具体的なアクションの検討をする上で有効な材料となります。

当社の営業活動では、これまでは「お客様に会いました」ということしか共有できていませんでした。そのため、実際に何回会ったのか、いつ会ったのかという活動実態はつかめていなかったように思います。Sansanを導入したことで、こうした定性的な情報を定量的に把握し、さまざまなことを計画的に進められるようになりました。スコアやマップといった新たな指標も加わり、今後はより抜け漏れのない営業体制を構築できると考えています。

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データとデータを掛け合わせて
顧客志向のソリューション提供へ

神崎 未乃理
日本通運株式会社
アカウントセールスビジネスユニット FR事業所

担当業務と、Sansanを導入してできるようになったことを教えてください。

ファーストリテイリング様のアカウントセールス担当としてFR事業所に所属し、お客様の要望を伺ったり、新たな価値を創造するプロジェクトを担ったりしています。当社としては世界16拠点に携わっており、私が担当しているのはアメリカとベトナムです。複数の国や拠点で同じ品質を展開するために、FR事業に携わる関係者同士の横のつながりを大切にしています。

FR事業所では、お客様の事業成長のスピードが非常に速く、その変化に合わせた付加価値のあるサービスを提供していかなければなりません。Sansanを導入してからは、異なる国や拠点の最新情報も素早くキャッチアップし、お客様に多角的な提案ができるようになりました。

Sansanを活用することで、業務の効率も上がったと思います。これまでミーティングで共有していた商談の情報を各自で把握し、必要な情報のみを担当者に問い合わせるというルーティンが生まれたのです。事業スピードの速いお客様は変化も多いため、ミーティングに使っていた時間をお客様へのさらなる価値貢献を考えることに使えるようになりました。また、各国担当者が同じ情報を持つことで、チームNXとして統一した方向性を示せるようになり、判断や決定もデータに基づいてできるようになったと感じています。これからは「企業リレーションスコア」と「ヒートマップ」も活用し、拠点や役職ごとに接点の濃度を把握することで、営業活動を満遍なく、かつ深く進めていきたいです。

顧客の要望を正確に把握するために、接点を増やすことを大切にしている。「Sansanでの情報共有で、時間を効率化できたと思います」

営業DXでどのようなことを実現したいですか。

Sansanをはじめとした営業DXツールやデータは、営業戦略の立案に活用していきたいです。戦略を立てる際には、現在の情報だけでなく過去の情報を分析し傾向を捉える必要があるため、ツールやデータが有効だと考えています。

すでにFR事業所で推進しているデータ活用としては、需要予測があります。お客様からいただく予測だけではなく、当社が所有している実績データをAIに学習させて、物流目線から予測を立て、双方向からのアプローチでより確かな作業計画を立てていく施策です。

さまざまなデータを扱う中で気付いたのは、当社が所有しているデータは思っている以上に多く、しかしうまく活用しきれていないということです。お客様のデータと当社のデータを掛け合わせて、得られた結果を可視化すると、新しい視点が生まれます。お客様からデータをもらうばかりではなく、顧客志向で要望をヒアリングし、私たちが持っているデータもしっかりと提供することで、要望に沿う形でソリューションを提供する。ここに積極的に取り組み、戦略立案へのデータ活用という次のステップに進んでいきたいです。

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データドリブンな
営業マネジメントで
価値貢献を続けていきます

古江 忠博
NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社
専務執⾏役員 グローバル事業本部長

貴社の営業DXの現状を教えてください。
また、Sansan Innovation Award受賞についてもお聞かせください。

NXグループは、1937年の設立以来、アジアの物流をリードする総合物流企業として成長し、現在57カ国にネットワークを広げています。グループの中核を担う日本通運は、国内に3万4千人を超える従業員を擁し、「顧客志向の強い企業への変革」を掲げ、お客様のサプライチェーンの最適化に取り組んでいます。

Sansanは当初、名刺管理ツールとして導入しましたが、社内の情報共有を推し進めるツールとして活用が進みました。特にコンタクト機能を営業日報に代えて記録することで、お客様との接点情報を組織全体で共有する仕組みが浸透し、営業生産性の向上や顧客志向の強化に貢献しています。従来の紙ベースの名刺管理から脱却し、データ化された情報を活用することで、誰がいつ、どの顧客と接点を持ち、どのような話をしたのかが明確になり、営業活動の質も向上しました。

2年連続での受賞は、この継続的な進化が認められた証です。特に2年目は審査のハードルが上がると考えていたため、誇りに思っています。前回の受賞では、Sansanの導入を認知・定着・理解・活用という4段階で考えた場合の、活用レベルへ引き上げる過程の取り組みを評価していただいたと理解しています。今回評価していただいたのは、活用レベルに到達した後の具体的なチャレンジで、顧客志向を強化するための取り組みなので、われわれの方針が間違っていなかったと確信でき非常にうれしく感じています。

2年連続の受賞について、「同じ賞への挑戦を続けることは、次の高みを目指すことであり、他のメンバーの励みにもなると思っています」。

物流業界をリードする貴社としての、今後の展望を教えてください。

日本国内の物流において、ドライバーの残業規制に関する2024年問題が注目されています。サステナビリティに配慮しない物流企業はサプライチェーンからの退場を余儀なくされ、メーカーの経営課題は、より良い商品を、より早く、より安く、より高品質で安定供給できるか、ということにシフトしています。この課題に向き合うとなると経営層同士がコミュニケーションを取るのは必然で、経営層との接点に着目する必要があります。

今回受賞した取り組みの一つである「企業リレーションスコア」は、まさにこの経営層との接点が、売上と相関性を持つことが認められた指標です。これを活用し、お客様との接点を深めていくことが、ファーストリテイリング様に「誰にもやさしい倉庫」に賛同していただいたような顧客志向の強化につながると考えています。

お客様との関係を深める鍵は、営業DXツールの活用にあります。Sansanはすでに活用レベルに到達していると思うので、次はSFAを認知・定着のレベルまで、さらには本質の理解・活用のレベルまで推進していきます。この取り組みはまだ道半ばで、終わりのないチャレンジです。生成AIといった新たな技術も活用し、データドリブンな営業マネジメントを実現することで、お客様への価値貢献を続けていきたいと思います。

  • ※ ページ上の内容は2025年3月時点の情報です。