Sansan Innovation Award 2021
Sansan DIGITALIST Innovator

INTERVIEW

NECソリューションイノベータ株式会社

NECグループの社会的価値をICTで担う中核企業として多様な事業を展開するNECソリューションイノベータ。2018年にマーケティングの専門組織を立ち上げ、デジタルマーケティングによる営業活動を推進してきました。新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけとして、さらなるDXへの取り組みをスタート。顧客接点の100%デジタル化に挑み、1万人を超える規模の会社でありながら、スピーディーな業績向上を果たしました。自社の成功事例を他社へと還元する活動にも積極的に取り組んでいます。

  • NECソリューションイノベータ株式会社
  • 設立1975年
  • 従業員数1万2565名(2022年3月31日時点)
  • 事業内容システムインテグレーション事業、基盤ソフトウェア開発事業、機器販売など
interview

受賞は率直にうれしかった。
チームメンバーの
誇りになりました

受賞企業代表
飯島 圭一
マーケティング推進本部 本部長

受賞理由となった取り組みについて教えてください。

NECソリューションイノベータは2018年にマーケティング推進本部を発足させ、営業とマーケティングの機能の強化に取り組んできました。われわれの売り上げの9割はNECグループ内での事業であり、残りの1割ほどが、外部のお客様とダイレクトに接点を持つ外販事業です。この外販事業を伸ばしていかなければならないという課題を持っていました。

そのためには営業生産性を上げなければならないのですが、それまでの営業プロセスは属人性が高く、10人いれば10通りのプロセスが存在しており、非効率なものでした。それを徹底的に標準化し、かつデジタル化を進めることで生産性を上げていく取り組みを進めていました。

そんな中、2020年に新型コロナウイルス感染症が拡大し、リアルな場での顧客接点が持てなくなったことで、マーケティングによるリードの獲得数が70%減るほどの大打撃を受けたのです。この事態を乗り切るために、「顧客接点を100%デジタルに振り切る」という決断をしました。

2021年に、Sansan DIGITALIST Innovatorを受賞。顧客接点を100%デジタル化することで、デジタルマーケティングを成功へと導いた。

取り組みにおいて重視していたのはどんなことでしたか。

営業のプロセスとマーケティングのプロセスがシームレスにつながることが重要だと捉えていました。マーケティングのチームによるリードの獲得から、ナーチャリング、営業への引き渡し、受注に至るまで、一連のプロセスがよどみなく流れていくことを強く意識して取り組みました。

組織体制で補った部分もあります。以前は営業とマーケティングのプロセスの間に空白のスペースがありましたが、新たにインサイドセールスの部隊を作って、そのギャップを埋め、一連のプロセスが円滑になるようにしています。

販促のチームにしても、以前はさまざまな部署に点在していて、それぞれのチームが我流で販促を行っていたために属人性が高くなっていました。しかし、組織としては、誰がやっても再現性が保てる状態にしておかなければなりません。プロセスを標準化してマニュアルを作り、たとえ新人であっても同じことができるような仕組みを作り上げることに注力しました。

多様なレイアウトのフリーアドレスを本社内に導入。部署を超えたコミュニケーションの活性化や自由な発想の促進を目的としている。

なぜ取り組みを実現できたのだと思いますか。

いろいろな方に「この短期間でよくあれだけのことをできたね」と言っていただくのですが、データがきれいな状態になっていたこと、これが全てなのではないかと思っています。

デジタルマーケティングを成功させる大きな要因の一つは、データの品質です。ただし、データを整えて分析可能な状態にしておくには、大変な手間が掛かります。さらに人手を掛けたとしても、データがところどころ欠損していたり、間違って入力されていたりという状態が見受けられ、なかなかいい分析ができていなかったのです。その時に出会ったのがSansanでした。

Sansanのデータ統合機能であるSansan Data Hubを使うことでデータクレンジングを完全に自動化することができ、工数はゼロになりました。データの品質も人力で行っていた頃より格段に向上しています。

目指したのは、より多くの受注を生み出し、営業生産性を上げること。Sansanを活用して高品質な顧客マスターを構築することでデジタルマーケティングを加速させ、顧客接点はウェブサイトやウェビナー、デジタルイベントといったオンライン上のものへと、約1年間でほぼ100%デジタルに切り替えられました。その結果、業績向上にも大きく貢献することができました。

データを基に動く文化が根付きました

受賞を振り返っていかがですか。

率直に言って、とてもうれしかったです。何より僕らがやってきたことが正しかったのだと、本当に勇気につながったんじゃないかなと思います。Sansan DIGITALIST Innovatorの受賞によって、社内で多くの人にわれわれの活動を知ってもらえたことも大きな変化でした。社外のお客様に対して取り組みを紹介したいと言われるようにもなりました。

社員の行動が変わり、これまでとは違った選択ができるようになってきたと思います。それが新しい文化として組織に根付いていって、Sansanのデータを基にしたマーケティング、データドリブンな営業活動がようやく実現しつつあります。今後は、われわれが持っている膨大なデータを一元化して、AIで解析し、「このお客様は、このサービスを必要としている」といった自動的なリコメンデーションを生成するなど、より効率的な営業活動ができるような状態を目指して取り組みを進めていきたいです。

interview

データを活用したアプローチが
営業との会話の中で
生まれるようになりました

瀬崎 大輔
マーケティング推進本部 DXアーキテクトマネージャー

データを取り扱う中で感じていた課題について教えてください。

2018年にマーケティング推進本部が発足した当初を振り返ってみると、データのマネジメントというところが全くできていなくて、マーケティングや営業にとって非常に使いづらいデータになっていました。それでも、使えるものに変えていこうとして、月に35時間ほど、年間にすると400〜500時間ほどをかけて人力でデータのクレンジングを行っていました。しかし人力で対応できる量には限界があり、どうしても間違いが発生することもあったため、大きな課題になっていました。

例えば何か一つの施策に取り組むにしても、データが整っていないので、顧客にアプローチするためのリストを作成することができませんでした。マーケティングの基となるデータを収集する際にも、過去のメールを検索したり、担当者の記憶から掘り起こしたりと、アナログな方法で対応している状況で非効率的だったのです。アナログが全てだめだというわけではありませんが、もっと効率よくできるのではないかと感じ、デジタル化の取り組みを進めてきました。

DXに取り組んだことにより、どのような変化がありましたか。

課題だったデータマネジメントの工数については、Sansanのテクノロジーを導入することで完全に自動化することができました。データの精度も、人力で対応していた頃は70%ほどが限界でしたが、Sansan導入後は軒並み90%以上まで改善することができています。

また、データマネジメントの取り組みと並行して、マーケティングの顧客接点のデジタル化にも取り組みました。その成果として、マーケティング部発足から約2年で、マーケティング部門のKPI指標の一つである案件創出金額を2.6倍にまで拡大することができています。さらに、新規リードを1件獲得するのにかかる獲得単価は70%減となり、大幅な効率化を実現しました。

データ活用について、営業のメンバーと戦略的な話ができるようになったのも大きな成果です。「このお客様のこのセグメントにアプローチをしたい」など、データを活用したアプローチが、実際に営業とマーケティングの会話の中で生み出されていると感じています。

営業とは「こんなウェブサイトを作りたい」といった話をすることが多かったが、データマネジメントが進んだことで視点が変わった。

DX推進担当者として、同じような立場にある方に伝えたいのはどんなことですか。

DXを推進する立場として、常に3つのこと考えています。まず1つ目は、仲間を作ること。1人ではDX推進はなし得ませんので、いかに味方を作るかというところが重要です。2つ目は、自分が動くことです。誰かがやってくれるのを待っていても何も変わらないので、自分が率先して変えていくのだという意識を常に持っています。3つ目は、だめな理由を探さないということです。何か新しいことに挑戦するときは、どうしてもネガティブになってしまいがちですが、恐れずにどんどんチャレンジをしていけば、最後にはきちんと成果につながると信じて取り組んでいます。

また、われわれが1万人以上の規模の会社でありながら短期間で成果を上げることができたのは、スモールスタートで進めたことが功を奏したからだと思います。小規模な施策を繰り返し、プロセスを標準化してマニュアルに落とし込んでいくことで、デジタルマーケティングを少しずつ社内に広げていくことができました。

今後取り組んでいきたいことについて教えてください。

今回の受賞をきっかけに、営業部から、お客様に対して取り組みを紹介してほしいと声を掛けてもらえるようになりました。実際に話をしたお客様からは「本当に参考になった」といううれしいフィードバックもいただき、私たちの取り組みが会社に対してきちんと貢献できているのだと実感しています。

社外のお客様にもっと貢献するためにも、データのさらなる活用を目指しています。データマネジメントは非常に重要ではありますが、データは単体ではあまり価値を持ちません。データはたくさん集まったり、より質が上がったり、何かと何かが結びついたりすることで初めて価値が生まれてくると思っています。営業にとって必要なデータは何なのかということを突き詰めて、より営業生産性が上がるようなデータマネジメントに取り組みたいです。

interview

新しい視点を得て
営業活動の量と質が
変わりました

小澤 文章
営業統括本部DXソリューション営業部 部長

DXの取り組みについて、営業の立場からどのように捉えていましたか。

従来は、お客様との最初の顧客接点を作ることは、われわれ営業部の役割でした。しかし2018年にマーケティング推進本部が発足し、彼らが顧客接点を作る部分を担ってくれるということになり、多少の戸惑いがあったのも事実です。というのも、当時の私はマーケティングについてあまり分かっておらず、デジタルマーケティングについてはなおさら分からないという状態でした。

ただ、弊社はシステムインテグレーション事業を行う会社ということもあり、前例のないことでも「まずはやってみよう」という社風があります。デジタルマーケティングについてもその精神をもって、前向きに取り組みを始めました。

取り組み前に感じていた課題について教えてください。

以前は、展示会やイベントなどのリアルな場を中心に新たなお客様と出会い、接点を獲得していました。ただしリアルな展示会というのは、その時はお客様も熱意を持っているのですが、少し日が経つとお客様の温度が下がってしまうことも多々あり、本当に成果につながっているのか不明瞭だったところがありました。さらにコロナ禍で展示会やイベントが中止となったことで、そうした接点の場がなくなってしまう事態にも陥りました。

しかしデジタルマーケティング施策の一環で、コロナ禍になる前からウェブサイト上でのイベント開催にいち早く取り組んでいたおかげで、コロナ禍以降もウェビナーでお客様との接点を作るということが簡単にできるようになっていたのです。それによって顧客との接点を失うことなく、むしろそれを他の営業部門にどんどん展開することで、非常に多くの顧客接点を作ることができました。

顧客接点が100%デジタルになり、営業活動の幅は広がった。Sansanから通知される同僚の営業活動情報も刺激になっている。

取り組みによって、働き方はどのように変わりましたか。

マーケティング部門が中心になって、弊社の中で散在してしまっていた膨大なデータをうまく統合してくれたことで、データがとても使いやすくなりました。それにより、それまでなかったような新たな視点を持てるようになったことが最も大きな変化です。

マーケティングによって顧客接点が増え、お客様の行動や振る舞いなどが手に取るように分かり、状況に合わせて確度の高いアプローチを行えるようになりました。そして、Sansanを使って、企業のニュースや、営業部の他のメンバーがどのお客様にいつお会いしてどんな商談をしたのかということをリアルタイムに把握し、データを営業活動に生かしています。

営業のやり方も大きく変わりました。営業プロセスをデジタルによって標準化することで楽になることが増え、業務のスピードやお客様に対する量と質が一気に上がりました。営業チームのメンバーも、データを見て「何かここにヒントがあるのではないか」と気付いてくれていると思います。

今は、営業部全体として、今後の営業活動をデータドリブンなものにすることに取り組んでいます。ゆくゆくはデータをAIで分析してお客様との接点を自動的に見いだし、商品やサービスを的確にご提案できるような営業活動につなげていきたいと考えています。

interview

お客様へ届けるため
デジタル活用で得た価値に
さらに磨きをかけていく

宮永 光郎
執行役員

今回の取り組みを、会社としてどのように捉えていますか。

NECソリューションイノベータは、NECグループの社会価値創造をICTで担っていく中核会社です。アジアを中心に全国に拠点を持ち、1万2000人のSEを抱える会社として、さまざまな事業を推進しています。高い技術力やイノベーターの目線などのアセットをフル活用して、弊社が本格的に営業活動を開始した8年前から6倍の事業拡大を実現しています。デジタルマーケティングや営業DXといった改革を、トップ自らが強力に推進してきた成果が表れたと言えるでしょう。

マーケティング部門のメンバーは、営業成果に直結するマーケティングとは何かを突き詰めて活動してきました。営業部門のメンバーは、マーケティング部門からもらったバトンをしっかり受けて、最短距離でそれをお客様に届けて事業を拡大するという目線を意識して取り組んでいます。

この2つの部門の社員を中心として、デジタルを活用して営業のプロセスを高度化することに非常に前向きに取り組む社員が増えてきました。常に自ら課題を見つけて、それを変えていこう、改善していこうという姿勢をみんなが持っていて、知恵を出しながら取り組んでいることにはいつも感心させられています。

2014年に7社が合併して発足した同社。デジタルマーケティングをはじめとしたDXを担う組織は、4年後の2018年に誕生している。

今後の展望についてお聞かせください。

営業活動のプロセスそのものについては、デジタルを活用することによるさまざまな変革が始まっており、この数年間でわれわれも取り組んできました。一定の成果が出せたとはいえ、まだまだ改善の余地がある領域はたくさん残っています。この先の中期計画では営業生産性をさらに上げていくことを重要視していますので、マーケティング部門と営業部門が一体となって課題を積極的に見つけ出し、改善していきたいと考えています。

DXについては、システムインテグレーションを中核とする事業を担う企業として、今後も先陣を切って強力に推進していかなければなりません。なぜなら、システムインテグレーションの高度化にDXは欠かせず、われわれが価値を提供するお客様も、営業DXについては弊社と同じような課題を感じているからです。まずは自社でDXを強力に推進し、イノベーションを起こすことで力をつけ、さらに磨きをかけてお客様に新たな価値を届けていきたいと思っています。

  • ※ ページ上の内容は2022年10月時点の情報です。