Sansan Innovation Award 2024
Sansan DIGITALIST Innovator
INTERVIEW
- 三井住友カード株式会社
- 創業1967年
- 従業員数5,847名(2024年3月末現在)
- 事業内容クレジットカード業務、デビットカード・プリペイドカード・その他決済業務、ローン業務、保証業務、信販業務、トランザクション業務、その他付随業務

当社のDXを振り返ることに
大きな意義がありました
大きな意義がありました
受賞企業代表
西山 泰幸 氏
ビジネスマーケティング統括部 グループ長
BtoB マーケティングスクアッド プロダクトオーナー
Sansan Innovation Awardを受賞されて、いかがですか。
私自身は「DX」という言葉が浸透していない2017年ごろから、営業強化を目的とした取り組みを始めました。時代の流れに合わせて「DX」という言葉を使うようになりましたが、リモートワークができるように端末を用意したり、SFAを導入したり、データベースを整備したりと、一つひとつできることを積み重ねてきたのが実態です。
今回、Sansan Innovation Awardにエントリーするに当たって、そうしたさまざまな領域でやってきたことを一元的にまとめる作業ができました。受賞できたことも非常にうれしかったですが、今までやってきたことを関係者に正しく伝えられたことが一番うれしかったです。
DXというと具体的に何をしているのか社内でも理解されづらかったので、エントリーに向けた準備の中で当社のDXの過程と成果を振り返れたことに、大きな意義があったと感じています。取り組みについて人に伝えようとすると気付くことも多かったです。自分たちの主観で「できました」と言うだけではなく、第三者から「ここが良かった」と言ってもらえる、反響があるというのも、貴重な機会でしたね。
今回の取り組みの内容と、取り組みを始めたきっかけを教えてください。
最初に手掛けたのはSFAの導入です。商談・活動の情報に加えて、契約情報をお客様単位で統合したデータベースが整ってきたところで、導入したのがSansanです。データ化された名刺情報がひも付けられるようになったことで、あらゆる情報を一元管理し、顧客データベースを高度化することができました。
取り組みを始めた目的は二つあります。営業担当者が便利に営業活動できるようにすることと、お客様との接点情報を一元的に管理することです。
2017年ごろからキャッシュレスの波が広がり、キャッシュレスを経費の支払い方法として導入したい企業が増えてきました。法人カードのマーケットが拡大し、経費が発生するすべての企業が当社のターゲットであることに対して、従来のやり方ではリソースが不足し、お客様のニーズに応えられないことが大きな課題でした。
当社の法人営業は、だいぶ前からやり方が変わっていなかったのです。情報の持ち出しがかなり制限されていたため、パソコンを持ち出せなかったり、紙の名刺をファイルで持ち歩いたりと、営業担当者は苦労していたと聞いています 。顧客情報もばらばらに管理されており、他の部門でどんなことが行われているかは聞かなければ分からない状態でした。


受賞した取り組みに関して登壇したSansan Innovation Summit 2024では注目が集まり、立ち見が出るほどの盛況だった。
取り組みによって、どのような変化がありましたか。
Sansanに登録した名刺情報を含む顧客情報をSFAで一元管理したことで、営業の効率化に貢献できました。例えば、さまざまなデータベースを参照して1〜2週間かけて作っていたターゲットリストが、すぐ作れるようになりました。法人営業の成果はスキルに依存する部分も大きいですが、アプローチまでの工数を削減したことでアプローチ数を増やせたので、営業強化にはつなげられたと考えています。
取り組みを推進する上で大事にしたのは、DXの目的をはっきり持っておくことです。DXはそれ自体が目的になりがちですが、当社にとっての最大の目的は、営業で成果を上げることです。成果に直結する選択を優先しながら、営業担当者の動きやすさとデータ活用のバランスを取るために、営業部門とも会話して方針を決めてきました。
デジタルツールの効果は導入しただけで生まれるものではなく、営業部門できちんと使ってもらえるかどうかに左右されます。また、営業活動において、人と人とのコミュニケーションはまだ重要な要素です。営業のフローをすべて自動化するのではなく、人でなければできない領域は人に集中してやってもらう。これも営業強化のポイントだと思っています。


DX推進に関する今後の展望を教えてください。
顧客データベースの情報は、お客様の興味・関心を推測してターゲティングする場面で効果を生んでいますが、成約率を上げることにもつなげていきたいです。
SFAの中には、営業担当者がテキストで登録している顧客や商談の情報がたまってきています。その集約や要約には工数がかかるため、活用できていないのが現状です。今後は生成AIを使って、営業部門がためてくれた情報をうまくくみ取り、営業部門に還元することに取り組めればと思っています。また、BtoBの領域ではアプローチ後すぐに成約することは少ないため、アプローチのタイミングが重要です。このタイミングを適正化することにも、AIを活用できるのではと考えています。
ターゲティングでも、使える情報の量や精度の改善がAIに期待できます。人の目にはない視点をAIから得て、データ活用をして営業力を上げていくことに、まさにチャレンジし始めたところです。



営業生産性が20%向上。
お客様への対応品質も
大きく変わりました
お客様への対応品質も
大きく変わりました
牧野 知之 氏
営業マネジメント部 シニアマネージャー
営業部門ではどのような変化がありましたか。
私が所属している営業マネジメント部は、法人営業のチームを統括する部門です。SFAを活用してターゲティングを行い、アプローチした結果もSFAに入力し、商談した場合は名刺情報をSansanに取り込んでもらうことで、顧客に関するあらゆる情報をSFAに一元化しています。
SFAを導入する前は、個人や部門でお客様の情報を管理しているという、まさに属人的な状態でした。顧客情報を収集する際は、個別に持っている情報をメールやチャットで共有していました。
今では、社内の誰もがお客様とのリレーション状況を確認できるようになり、営業の生産性は劇的に上がりました。20%ほどの向上に寄与しています。
SFAの顧客情報にはSansanの情報を自動でひも付けしているため、営業担当者や管理者の手を煩わせることなく、正しい情報でのお客様へのアプローチが実現できています。契約情報や案件情報などもデータベースで一元管理できているので、われわれ金融業界にとって非常に重要である、お客様への対応品質の向上にもつながっています。
営業部門におけるDXの意義と、今後の展望を教えてください。
SFAもSansanも、当社ではメーラーやウェブブラウザーと同じような立ち位置になっていると思います。文化として根付いているので、ないと困るというより、使って当たり前です。顧客情報も、会社として当然管理すべきだという気がします。
デジタルツールを活用する意義は、営業担当者にも浸透してきているようです。最近も、顧客に対して前任者がどのような対応をしていたかを把握している・していないでは対応の品質がまったく異なるので、データベースで折衝状況を確認してから営業活動したい、という声を聞きました。私の部門は予算の策定や組織体制を検討する一環でDX推進の役割を担っているのですが、やっていることに意味があると感じています。
データは十分にたまってきているので、今後は、ビジネスに直結する営業活動により多くの時間を使ってもらえるようリードしたいと考えています。例えば、各部門が独自で作成しているターゲットリストには、表形式のアナログなものがあります。これらをSFAに一元化し、営業で簡単に活用できる状態にすることを目指します。そして、営業目標に対して何ができるか、足りない部分をどうカバーしていくかという観点でデータを活用し、ターゲティングをさ らに効率化することで、お客様もわれわれもメリットを享受できる状態に、組織としてシフトしていきたいです。



営業リソースをマーケで補完。
二桁億円の売上拡大に
つながりました
二桁億円の売上拡大に
つながりました
鈴木 研吾 氏
ビジネスマーケティング統括部 シニアマネージャー
取り組みへの関わりを教えてください。
法人カードのマーケティング業務に携わっています。法人決済のサービスは日本に存在するすべての企業がお客様になり得るので、少ないリソースを使ってアプローチするために、市場や企業の動向を把握した上でターゲティングすることが重要です。そこで2022年に、法人向けマーケティングを本格化させるためにマーケティングチームを発足し、Sansanと連携させたSFAにさらに連携させられるMAを導入しました。そして、営業活動で伝える情報と同じ情報をマーケティング施策を通じてお客様に伝えていくことで、当社のカードを使うメリットをより多くのお客様に理解いただき、売上増加を実現しました。二桁億円の拡大というのが、定量的な成果です。
SFA内のデータベースは、以前は、十分に活用できる状態ではありませんでした。企業に関する情報は充実していましたが、お客様ごとの折衝やマーケティング結果の記録には不足があったのです。マーケティング施策を実行する上でのポイントは、そうした接点に関する情報の蓄積ですが、営業担当者に入力してもらわなければなりません。そこで、情報が入力されたら、業種や年商、成約率などセグメントを細かく切って売上の期待値を算出し、入力の成果として把握できるようにしました。情報を入力すると統計を基にした情報が返ってくるという循環を営業担当者が実感するようになってから、データベースが充実していったように感じます。


SFAだけでなくMAにもSansanの接点情報をひも付け。ウェブ来訪者を所属企業の年商規模で分類・分析するなど、対応の幅が広がった。
マーケティング部門ではどのような変化がありましたか。
営業担当者だけでは対応しきれない部分をサポートしたり、ノウハウを転用したりできるようになりました。
以前は、ターゲットリストに対して営業活動を行っており、逆にいうとリストに入っていないお客様については対応できていない状態でした。MAを活用するようになってからは、 お客様の行動に合わせたシナリオメールや資料などで情報提供することで、営業担当者が直接対応できないお客様にも対応できるようになりました。その成果を営業部門に共有することで、営業の直観からもマーケティングの統計からも成約を見込める「勝ちパターン」が分かるようになり、データが共通言語になったように思います。
データによってお客様との関係性が見えやすくなってからは、一つひとつの施策ではなく、成約までの期間や継続率など、当社のカードを使って価値を感じてもらうという一連の流れに目が向くようになりました。マーケティングでは施策に集中してしまうと、「クリック率のいい広告を作ろう」といったように、お客様との関係作りが線ではなく点になりがちです。営業やマーケティングが役割を分けながら連携することで、お客様と長く関係を築くための議論が生まれるようになったと思います。



キャッシュレスの課題解決には
DXが不可欠です
DXが不可欠です
荒井 一博 氏
ビジネスマーケティング統括部 部付部長
貴社の概要を教えてください。また、Sansan Innovation Award受賞を聞いてどのように思いましたか。
当社は、安全・安心・便利をお届けする、国内トップのキャッシュレス基盤を持つペイメント会社です。近年は、決済にまつわる周辺サービスにおいて、デジタルを活用して世の中を良い方向へ変えていくということに注力しています。
キャッシュレスを推進する事業会社として、商品とデジタルは今や切っても切り離せないものです。これまで競合としていたのはメガバンク系のクレジットカード会社やレガシーな企業でしたが、キャッシュレスや派生するデジタルサービスを提供するSaaS事業者とも競わなければならなくなっています。そういった意味でも、デジタルをうまく扱うことは最低条件になってきていると思います。当社も、外部パートナーとの協業などにより、銀行口座・決済・証券・保険などの金融サービスを一つのモバイルアプリで管理できる「Olive」の提供を開始するといった進化をしてきました。
今回の受賞を聞いて、うれしかったですね。営業DXの推進は営 業部門やお客様のための取り組みなので、成果をアピールする必要はないですが、当社を支える重要な仕事です。それが評価されて関係メンバーはうれしかったと思いますし、分かりやすく言語化されて世に出たことで、社内外の人に知ってもらうこともできました。われわれの営業DXを支えてくれているパートナーである貴社にがんばりを認めてもらえたことも、非常にありがたかったです。


自身が営業現場に出ていたとき、ツールの必要性をすぐには理解できなかったという。信念を持って推進を続けた西山さんをねぎらった。
貴社のDXについて、今後の展望を教えてください。
DXは、お客様の変化に合わせるために重要な手段だと思っています。カード決済は、これまでは対面での利用が中心でしたが、現在はお客様のDXが進み、ECやSaaSサービスなど非対面での利用が増加しています。お客様が利用するサービスやインフラに柔軟に対応し、データ連携していく。それが利便性の向上につながります。
利便性にデジタルツールとの連携が不可欠であると同時に、お客様の情報を取り扱う企業として、セキュリティーにも十分配慮する必要があります。データ連携先サービスの運営企業をパートナーと捉え、われわれが考えるセキュリティーの基準やポイントを開示し、理解していただいた上で、サービス運営を共に担っていきたいと思っています。そういった意味では、連携先の選択も、DX推進において非常に大切です。
お客様の決済やお金にまつわる課題を、われわれのキャッシュレスサービスを通じて網羅的に解決したい、というのが根本的な考え方ですが、当社のサービス単独で解決できる範囲は限定的です。SMBCグループやデータ連携先とアライアンスを組むことで、総合的にお客様の課題を解決したいと考えています。そして今後も、キャッシュレスのリーディングカンパニーとして、お客様に選ばれ、あらゆる決済シーンでサポートできる「“デジタル”&“イノベーション”カンパニー」を目指し、まい進します。


- ※ ページ上の内容は2025年2月時点の情報です。