Sansan Innovation Award 2025
Sansan Innovator

INTERVIEW

小西安株式会社

小西安株式会社は、1828年創業の化学品専門商社です。創業200周年を目前に控え、営業現場での業務効率の向上を急務としていた同社は、属人的に管理されていた人脈情報や専門知識の全社での共有を目的としてSansanを導入。その結果、1人当たり月3.2時間、会社全体で約500時間にも及ぶ大幅な業務時間短縮を実現しました。現在も、より高度かつ戦略的な営業活動の実現を目指し、さらなるDX推進に取り組んでいます。

  • 小西安株式会社
  • 設立1921年(創業:1828年)
  • 従業員数140名(2024年3月現在)
  • 事業内容無機化学品・有機化学品・樹脂・金属・表面処理剤・電子材料・ガス・環境対応商品の国内海外取引、古物売買および輸出入・不動産賃貸業
interview

先人たちが積み上げた情報を
引き継いでいくために
DXは不可欠です

受賞企業代表
石井 啓誠
ライフサイエンス本部
ライフサイエンス部 ライフサイエンス課長

DX推進に取り組むことになった経緯を教えてください。

現在、私はライフサイエンス本部ライフサイエンス部に所属して、医薬、農薬、化粧品、健康食品などの取引先への化学品原料の販売や営業を行っています。コロナ禍で営業活動が制限されていた時期に、若手を中心に営業を効率化しようという声が自然に高まり、営業部門の代表としてDX推進チームの立ち上げを会社に働きかけ、発足しました。経営陣にも、変化する時代の中で変えていくべきことがあるという認識が強くあったのでしょう。社長が日頃から現場主義を口にするなど、現場の声を否定しない社風もチーム発足を後押ししたと思います。

チームを指揮する立場を任され、あらためて課題の洗い出しを行った結果、最大の問題として上がったのが、情報を共有できていないことでした。当社は、まもなく創業200周年を迎えます。また、扱う製品の種類が多い専門商社として、各営業担当者が高い専門知識を有していますが、それぞれが個人商店化してしまっているという課題もありました。商談履歴や人脈などの情報が社内で共有されていなかったため、過去の取引実績を知らずにアプローチしてしまい、営業活動に無駄が生じるケースも少なからず起きていたのです。

今回の取り組みについて教えてください。

営業力を上げるために、人脈情報や営業情報を全社で共有する必要性を痛感し、さまざまなツールを検討する中で、Sansanが当社の社風に最も合うと判断し、導入を決めました。

導入後、まず行ったのは、経営層を含む全社員140名が持っている名刺の取り込みです。最初の一カ月で、約12万5000枚の名刺情報が積み上がりました。時期も味方しました。私たちの業界には、年始に取引先にあいさつに伺うという、長年の慣習があります。名刺を取り込んだのがちょうど12月だったため、年明けの2023年1月に営業担当者それぞれが、Sansanであらためて取引先の情報を確認するなど、その利便性を身をもって体験したことが、その後の浸透を加速させたのだと思います。

導入1年後には、全社でのSansanの使用状況を確認するため、名刺の取り込み枚数や、案件作成件数、ログイン率などを調べ、利用頻度の高い社員を発表する「Sansan表彰式」を実施してさらなる浸透を促しました。

DXの推進は、働き方の変化や新たなコミュニケーション手段の普及により、営業担当者一人ひとりの負担が増したことも引き金になった。

Sansan Innovation Awardの受賞を振り返ってみていかがですか。

本当に驚きました。社長にも「よく頑張った」と褒められましたが、社内の各部署でDX推進チームのメンバーが、Sansanの活用法を広げてくれた結果だと思っているので、彼らには感謝の気持ちでいっぱいです。情報が一元管理されず、共有できない状況に、当時、彼らが本当に困っていたことを知っているので、私にとっては、この問題を解消する取り組みが実を結んだことが何よりうれしいことでした。

私たち営業担当者は、既存顧客と新規の取引を始める際にも、これまではインターネットでの検索や、社内の聞き取りなどで、相手企業の情報を把握していました。それが、Sansanを導入したことで、商談履歴や相手先の担当者の情報を即座に把握できるようになり、業務効率が格段に上がりました。この便利さを各担当者が理解した今は、何か新しいことをする時には「まずSansanで検索する」という習慣が定着しています。

メリットは、営業部だけでなく、全社で実感していると思います。例えば、会社に届いた郵便物の振り分けを担当する社員は、これまで配布先を見定めるのに時間をとられていましたが、Sansanを使えば担当者がすぐに分かるため、業務時間が短縮され、誤配送も減っています。DX推進のハードル自体も下がったと思います。第一弾の取り組みとなったSansanの導入が成功したことで、社内では「次は何をしよう」「あれを取り入れよう」といった話が出るようになりました。

また、意見を上げればそれが実現できるという感触を得たことも、会社にとって大きな成果だったと思います。新しいことをしようとするときには当然費用がかかります。提案すれば費用対効果を求められる。これまではそれで萎縮してしまうこともあったかもしれませんが、今回の取り組みで業務効率化が実現できたことで、社員一人ひとりの自信になった。現場からの提案が出やすい環境になったと感じています。

Sansanが定着した背景には、DX導入による業務効率化のメリットを、営業担当者だけでなく、全社で実感できたことがあったという。

今後はどんなことに取り組んでいきたいですか。

今後は、一元管理された情報を基に引き継ぎ書を作成したり、AIと組み合わせることで取引内容を要約したり、蓄積したデータを分析したりと、情報の扱い方の精度を高めていく必要があります。先人たちが積み上げた情報を、今の働き方、そして新しい世代に引き継いでいく時に、DX、効率化は間違いなく必要だと思うので、今後もそういった活動を続けていきたいです。

interview

全社で年間約500時間分の
業務削減を実現しました

村松 穂香
化学品本部 化学品2部 機能化学課

現場ではどのような課題がありましたか

DXが進む前は、どの部署で誰がどの取引先とやり取りをしているのかが把握しづらい状況でした。私はガラス製品や自動車の部品、塗料といった化学品の原料を扱う部署で営業の窓口をしていますが、化学品の専門商社である弊社は、そもそも扱う製品が数百種類にも及び、その分、部署も多く、取引先も多岐に渡ります。例えば、何か新しい製品の取り扱いを始めたい場合、その取引先と接点がありそうな部署の担当者に声をかけても、過去の取引実績が分からず、徒労に終わることがあり、それが全社的な課題となっていました。

今回の取り組みを通して、どのような変化がありましたか。

業務の効率はぐっと上がりました。社内の誰がどの取引先と接点があるのか、すぐに分かるようになったのが時間削減につながっています。計算したところ、1人当たり一カ月に約3.2時間、会社全体としては約500時間も削減できています。

また、新しく狙いたい業界では、お客様にアプローチするまでの時間がかなり短くなり、それによって案件につながるまでの時間も短くすることができて、結果として、売り上げアップにつながっています。

私の場合、入社した年度に、DXによって全社で情報を共有できるようになったことがラッキーだったと思います。社内の人に当たりをつけて声をかけ、取引先の情報を教えてもらうというのは新入社員にとってはハードルの高いことです。そういう意味で、大きな助けになりました。

商社の営業担当者は取引先からスピーディーな対応を求められる機会が多く、DXによる社内の情報共有は売り上げに直結する課題だった。

働き方はどのように変わりましたか。

商談内容を記録する際には、商談に参加された方全員の名刺を議事録にひも付けています。過去の経緯を整理するための報告書に使うこともありますし、営業窓口を交代する際などは、蓄積した商談履歴や議事録が引き継ぎの資料になります。

取引先に出向く機会も多いのですが、外出先でもスマートフォンで訪問先との取引履歴が確認できるため、自分の頭の中にある記憶だけに頼らずに済みます。例えば、取引先から過去の取引に関する質問をされた時にも、すぐに答えられるのでとても便利です。私にとっては、どこにいても取引先との情報が確認できる、ある種「お守り」のようなものにもなっています。

取引先に関する情報は日々蓄積されていきます。その情報を共有・活用することで業務効率が上がるだけでなく、削減できた時間で、顧客の立場に寄り添った提案を考えたり、相手の要望に対して迅速に動けたりするなど、より丁寧な営業活動にも注力できています。今後も自分の業務の中でいろいろなツールを使って、業務効率化や成果の最大化に向き合っていきたいです。

interview

人脈情報、専門知識といった
生きた情報が
日々積み上がっています

海老沢 剛
管理本部長

今回の取り組みについて教えてください。

現在、私は管理本部長として、財務経理、総務、法務、情報システムなど、管理部門の業務、いわばバックオフィスで営業活動のサポートをしています。営業部門の石井から相談を受けたDXの推進は、社長が日頃口にしている「現場主義」にも沿うものだと感じ、私が責任者となってチームを立ち上げました。

各部署から代表が集まり、議論を交わす中で、われわれ管理部門は、すべての取引履歴を把握していましたが、営業担当者の間では共有できていなかったことと、それこそが最大の課題であることが分かりました。

チームを立ち上げた際、最初に私が言ったのは、「『これは改善できる』『もう少しこうなったらいい』と思うものは何でも言い合おう」ということでした。社長が言うように、業務の重要な部分は現場にあります。現場の声を余すことなく吸い上げ、現場がやりたいと言ったことを実現させる。それが何より大事だと考えたのです。営業担当者たちからは活発に意見が出されました。中には管理職として耳の痛い話もありましたが、皆、恐れずに言ってくれた。そこに感謝もしていますし、何より彼らから伝わってきた「埋もれている情報を何とか共有したい」という熱い思いこそがSansan導入の決め手になりました。

今回の取り組みを通して、どのような変化が起きましたか。

情報共有の難しさを知っている彼らには、自分の人脈や知識を抱え込もうという意識は皆無でした。現在も、各営業担当者が日々の活動の中で蓄積した情報が積み上がってきています。情報が蓄積されれば、Sansanを使うメリットが大きくなります。外出先でも必要な情報をいつでも確認することができ、全社員が一気にSansanの便利さを実感して、本当の生きた情報として活用できるようになった。人脈情報だけでなく、専門知識も、蓄積するメリットを実感することができました。

横のつながりも強化されました。情報の共有によって、これまでは1取引先1商品だけの取り扱いだった既存顧客に対して、別の部署が別の商品を提案するといった組織横断による協働の動きが出てくるなど、商売の幅は確実に広がっていると思います。

また、社員一人ひとりの意識も変わりました。これまで、システムやツールの導入は情報システム部門が企画立案していました。しかし、今回の取り組みを通して、営業部門の社員が「自分たちでも企画ができる」と気付き、自由に意見を言えるようになりました。日々の業務での不便を、あきらめるのではなく、もしかしたら改善できるかもと考える。それは大きな違いです。

個人商店化していた人脈情報を会社の財産にする、という目標を早期に実現できたのは、営業担当者たちの自発的な動きによるものだった。

今後取り組みたいことを教えてください。

専門商社としては、DXによってこうした業務効率化を実現するだけでなく、新たな収益の創出もしなくてはなりません。今後は、Sansanをはじめ、AI契約データベース「Contract One」やほかのDXサービスも使い、データの活用をより洗練させて、営業活動をより高度化できるように、皆でまた検討していきたいと考えています。

interview

DXはまだ道半ば。
伝統を守りながら
変化を恐れず前進する

小西 健
代表取締役社長

今回の受賞をどう感じましたか。

弊社が常日頃から掲げているのは「現場主義」です。現場の声には多くの宝がある。今回のDX推進の取り組みも、きっかけは現場の社員から上がってきた強い要望でした。こうした現場の声に応えたい、応援したいという思いでいたので、今回の受賞はこの上なく幸せなことです。社員たちにとってもモチベーションになると思います。

また、社員が自ら企画して立案したことが、社内だけでなく、社外からも評価されたことを大変うれしく思います。私は外出先で受賞の第一報を受けましたが、電話口から社員の興奮した声が聞こえてきたことをよく覚えています。

取り組み後、社内にどんな変化がありましたか。

これまで時間がかかっていた業務があっという間に終わる。しかもそれが分析され、共有される。こうしたことは私が入社した頃には考えられないことでした。当社の長い歴史において、デジタルツールの活用による業務の効率化は非常に大きな変化だったと思います。

また、提案をすれば、こうして具現化できるということを実感できたことも、社員にとって大きな成果だったと思っています。私にとっても、自主的に動く社員がこれほど多くいることを確認できたことは何よりの幸せであり、これからの活躍がより楽しみになりました。

1828年(文政11年)に薬種・染料問屋「小西安兵衛商店」として日本橋で創業。200周年に向けて、世界No.1の化学品専門商社を目指す。

DXの推進は貴社のどんな未来につながるとお考えでしょうか。

小西安株式会社は文政11年、1828年に創業して、現在197年目。間もなく200周年を迎える化学品専門商社です。創業当初は薬種、染料を扱うところからスタートし、明治以降、化学薬品の分野に本格参入しました。その後、「信用は資本なり」の社是のもと、日本の化学産業の発展とともに歩んできました。

現在は化学品専門商社として、化学品、エレクトロニクス、医農薬の3つの柱で事業展開をしていますが、小西安が目指すのは、より良い会社、より役に立つ会社です。学ぶべきものはどんどん学び、良きものは取り入れ、どんどん知識を吸収し、最終的には世の中に役に立つ活動をすること、これが会社の歴史をより長く積み重ねていくためには重要だと思っています。

今後も小西安が守るべきもの、これは変わらない。ただその中で、変化を恐れずに進んでいく。これが、小西安が進む道だと考えます。変化の激しい時代にあって、特にデジタルツールを活用できる会社とそうでない会社では、大きく成長曲線が異なっていくでしょう。今後は、商社という事業自体がデジタルやAIとの戦いとなる。この時に力を借りるべきものがDXだと私は考えています。

ただ、DXを本当の意味で理解するには時間がかかります。DXが小西安の伝統を阻害するものではないということは、今回大いに学ばせていただきました。DXを推進することによって生まれた時間や心の余裕で、小西安らしい、人にしかできない考えを進めれば、そこで新たな発想が生まれるかもしれません。守るべきものは守り、良きものは取り入れ、学び続ける。この姿勢で、今の時代に合ったデジタル化を進めていきたいと思っています。

  • ※ ページ上の内容は2025年7月時点の情報です。