Sansan Innovation Award 2020
Sansan Innovator

INTERVIEW

シミックホールディングス株式会社

シミックホールディングス株式会社は、1992年に日本初のCRO(医薬品開発受託機関)として事業を開始しました。30周年を迎える2022年においては国内外にグループ会社を構え、7000人を超える従業員が一体となり、研究開発から製造、営業、マーケティングまでを展開しています。同社はSansanを活用し、データの整合性が担保されたデータベースを、顧客に関する情報やデータを共有できる環境として構築。グループ会社間や担当者間で連携しながらデータを活用する目線が生まれました。

  • シミックホールディングス株式会社
  • 設立1985年(創業1992年)
  • 従業員数7595名 ※連結子会社を含む(2021年10月1日現在)
  • 事業内容CRO(医薬品開発支援機関)事業、CDMO(医薬品製剤開発・製造支援機関)事業、Market Solutions事業、Site Support Solutions事業、Healthcare Revolution事業
interview

みんなのために
データを活用しようという
目線が生まれました

受賞企業代表
成田 周平
シミックソリューションズ株式会社
自治体ソリューション本部 ビジネスデベロップメント部 部長

受賞理由になった取り組みについて教えてください。

当時はシミックグループの持株会社であるシミックホールディングス株式会社に在籍していました。重要な取引先(キー・アカウント)を選定し、ニーズへの的確な対応や適切なサービスの提案・実行を可能にする「キー・アカウント・マネジメント」の推進に取り組みました。

医薬品開発の受託を展開していることから、ビジネスの期間は10年以上の長期間にわたり、クライアントは全世界に及びます。また、20社以上のグループ会社が存在するため、同一のクライアントに対してグループ各社に営業担当者がいるようなケースも多くあります。このような背景から、顧客への働き掛けが重複するといったことが起こり、とにかく営業効率が悪い状態でした。

大事なクライアントとの信頼関係を強化するためには、それぞれが持っている顧客に関する情報の集約が必要になります。そこでグループ内の顧客情報の統合を目的に、Sansanを活用することになりました。約120名の営業担当者が持つ累計約7万枚の名刺情報を一元管理することで、グループ内の誰がクライアントの誰といつ会ったのかを正確に把握できるようになり、より適切で効率的な営業活動を実現できました。

キー・アカウント・マネジメントを強化するために、岩崎氏(インタビュー4人目)とともにSansanの活用を推進した。

取り組みによって、どのような変化がありましたか。

以前はクライアントのニーズに対して、各営業担当者が自分の担当領域で対応できるか、対応できないかを考える傾向にありました。今では自分の担当領域でなくても、みんながクライアントの戦略や開発について興味を持つようになってきたと感じています。クライアントが示す方向性に対してどう動くべきか、以前と比べて戦略的な話ができるようになりました。

同じチームで同じ方向性と目的を持って、協力しながらクライアントに向き合う。そのために役立つデータを自分のためだけに使うのではなく「みんなのために使いましょう」という目線が新しく生まれたと思います。顧客との接点が多い人から情報を集めたり、トップマネジメント同士の接点の有無を確認したり、より俯瞰した視点でのキー・アカウント・マネジメントが可能になりました。

医薬品の開発は10年、15年というスパンになるため、担当者は入れ替わっていきます。クライアントに関する情報をキープして、複数の担当者できちんと共有・活用していくことが、「ずっと一緒にいます」という安心感につながります。情報を確実に引き継ぎ、活用することが大切だと思っています。

医薬品開発は10年、15年。データを引き継ぐことが安心感につながります

受賞した際の感想や周りの反応はいかがでしたか。

外から評価していただけたことは、非常にうれしかったです。どちらかというと裏方として動くことが多い私たちの仕事を知り、「こういう仕事もある」と注目していただけることは良かったと思います。

初めてお会いする方に多いのですが、お会いする前に私のことをインターネットで検索する方がいらっしゃいます。「シミック」「成田」で検索すると、写真付きで出てくるようになったので、そういう意味ではつかみが良くなったかなと(笑)。私のことを知っていただくきっかけの一つにもなったと思います。

現在向き合っていることを教えてください。

現在は、シミックソリューションズ株式会社の自治体ソリューション本部で、新型コロナウイルスのワクチン接種や検査キットなどに関する事業の開発に携わっています。主なクライアントが製薬会社から全国の自治体へと変わりましたが、業務内容自体はそれほど変わりません。

個人のヘルスバリュー向上を目指すPHVC(Personal Health Value Creator)というビジネスモデルの推進は、2021年11月に発表したものです。新型コロナウイルスに関する検査や予防、ワクチン接種など個人レベルで問題に対応する必要性が高まったため、製薬企業を対象としたPVC(Pharmaceutical Value Creator)からPHVCへとビジネスモデルを変えていくことを、このタイミングで打ち出しました。

ワクチン自体は製薬会社が製造しますが、ワクチンの円滑な接種や接種管理も重要です。それを主導している自治体と医療機関、さらに住民とをつなぐ役割を担っているのが、私たちです。最近では、新潟県妙高市と新型コロナウイルス感染症対策と健康増進に係る包括連携協定を締結しました。検査パッケージの提供に加え、地域の健康課題を解決するための支援も行っていきます。

上)主なクライアントが自治体へと変わった。右)下)同社は広報誌「C-PRESS」でも製薬会社以外のステークホルダーとつながりを持つ。

今後は、どのようなことに挑戦したいですか。

会社として個人の健康に寄与する事業に取り組む中で、まず考えたいのは、個人の日々の体温や血圧など、バイタルデータの記録の全てをデジタル化できるかということです。これが可能になれば、PHR(Personal Health Record)のデータから、その個人には何が効くのかを導き出す、いわゆるテーラーメイド医療を素早く提供できる環境を実現できると思っています。デジタル化という方向性に進みながら、そのデータをどのように解釈し、どのように個人レベルに落とし込んでいくかに取り組んでいきたいです。

個人としては、さまざまな取り組みを立ち上げることにも積極的に関わっていきたいです。今、新しいことに一緒に取り組めそうな仲間が業界を越えて増えてきたという実感があります。シミックグループだけ、東京だけ、ではなく、やりたいことが実現できる環境を日本全国に作っていきたいです。

interview

同じクライアントを担当する人に
興味を持つようになりました

樋口 聡
シミックホールディングス株式会社
コーポレートビジネスデベロップメント部

日々の業務に変化はありましたか。

グループ内の複数社が関わるプロジェクトの調整や、新規参入を検討している企業に対する窓口としての業務を担っています。そうした役割から、Sansanのようなグループ全体で活用するシステムやツールの導入・運用にも関わっています。

キー・アカウント・マネジメントの推進とSansanの活用によって、各グループ会社にいる事業開発や営業の担当者同士のつながりが強くなりました。自分が担当しているクライアントをグループ内の誰が担当していて、どのくらいの関係性があるかということに興味を持つようになったことが、一番変わったことだと思います。アプローチしたいクライアントがいるとき、担当者間で「この方を紹介してもらえませんか?」という言葉がすごく簡単に出るようにもなりました。

今後はデータをどのように活用していきたいですか。

Sansan Innovation Awardを受賞した報せを聞き、数ある企業の中からデータの活用について高く評価されたことは素晴らしいことだと思いました。同時に、これからもデータ活用をしっかりと推進していくために、その活用方法を改めて検討していかなければならないことも強く感じました。

現在Sansanを特に使っているのは、事業開発や営業など現場に近い社員です。今後は、例えばCEOやCFOといった経営層にも活用してもらい、そこから得られる情報を現場で活用していくことも検討していきたいです。お客様のニーズに対して新しいサービスを提供していくためにも、これまで以上にデータを活用し、それを受注や売上につなげることで会社に貢献していきたいです。

interview

取り組んだことの成果は
新しい事業領域でも
出てくると思います

秋田 昌男
シミックソリューションズ株式会社
執行役員 自治体ソリューションBD本部
兼 ロブセンス企画部 本部長

取り組まれている事業について教えてください。

2021年から推進しているビジネスモデルであるPHVC(Personal Health Value Creator)の一環として、自治体向けのさまざまな事業の開発・提案を、成田と一緒に行っています。自治体が主導するコロナワクチン接種をコンサルタントの立場から支援しながら、持続可能な地域づくりといったコロナ後を見据えたSDGs文脈の政策に対して、私たちが持つノウハウを活用した提案も進めています。

電子お薬手帳としてスタートした「harmo(ハルモ)」ですが、今ではコロナワクチンを含む予防接種の管理ができるアプリケーションになっています。自治体が課題としているDXと非常に親和性が高いため、いくつかの連携協定を結んでいる自治体から導入を進めているところです。

今回の成果をどのように活用していきたいですか。

これまでに取り組んだキー・アカウント・マネジメントの成果は、自治体向けの事業領域でもこれから出てくると思います。自治体の方々と関係を構築する際には、その自治体の方と過去に接点を持った社員をSansanで見つけることができました。事前情報を入手し、これまでの経緯を把握した上でコンタクトすることで、よりスピーディーに関係を構築でき、効率化が実現しています。今後は、こうして得られたノウハウや成果を全国1700以上ある自治体に向けても生かしていきたいです。

また、これまでは企業のデータだけを取り扱っていましたが、私が取り組んでいる事業・サービスは、自治体を通して個人へと広がっています。そのことを踏まえると、グループ各社がそれぞれ展開している事業の先にいる個人のお客様のデータまで、今後は統合的に扱っていく必要が出てくると考えています。これまで以上に広い範囲でデータを有効活用し、その成果を個人の健康につなげていくことで、社会に貢献していきたいです。

上)harmoは予防接種の管理もできる。右)下)企業としての姿勢や方針を、本社のギャラリーにて紹介している。

interview

お客様の情報を会社の資産にする。
社員には伝わったはずです

岩崎 大地
シミックホールディングス株式会社
コーポレートビジネスデベロップメント部 部長

当時を振り返っていかがですか。

大企業のクライアントであれば、キー・アカウント・マネジメントを実施する際には、向き合う方が数百人に及ぶことがあります。お客様のニーズをしっかりと拾って、関係性を深めていく方法を考えたときに、グループ内の誰がクライアントの誰といつお会いしたかを集中管理する必要性が生まれていました。Sansanを活用したキー・アカウント・マネジメントの強化を成田と協力しながら推進したことで、クライアントに関わるメンバーの情報を集約できるようになり、より効率的な関係構築やニーズへの対応が実現しました。

今回の取り組みを通して「お客様の情報を資産化する」という考えは、きちんと社員に伝わったと思います。そのときのポイントになったのは、正確なデータを集積することです。Sansanを活用することで、データの整合性をしっかりと担保しながらデータベースを構築することができました。また、名刺交換をした時点の情報だけでなく、その方の役職や所属する会社の変遷といった情報を時系列で追うことができるようになったことも大きな成果でした。

営業を統括する立場としては、営業戦略においてどうやって得られたデータを活用していくかということも重要になると考えています。単に人脈の有無を確認するためにSansanを使うのではなく、コロナ禍のような状況において私たちのアクティビティーがどのくらい上がっているか、クライアントとの接点がどのくらいあるのかなどを見直す上でも、非常に役に立っています。

DXにおける今後の展望を教えてください。

名刺の情報をデジタル化してデータベースとして活用していくことで、さまざまな発見がありました。その発見の一つが、オフラインとオンラインの違いではないでしょうか。対面で直接面談した方が効果的な場合もありますが、オンライン会議の方が効率的な場合もあります。しかし、それぞれのメリット・デメリットについては、意外と整理できていないものです。Sansanに登録された情報を見ていくことで、改めて対面の接点とオンラインの接点を比較することができました。DXを進めることは、他方でリアルに対面することの大切さを再認識するきっかけにもなったと考えています。

現在、製薬業界全体でDXが進んでいます。かつては、フラスコの中で実験をして薬を作っていましたが、今ではデジタルで化学式を合成すれば、何千、何万という化合物が瞬時に出来上がります。その一方で、出来上がった薬を必要としている方に届けることの効率性においては、まだまだDXの余地が残されています。そういった領域におけるDXについても、私たちのサービスとして取り組んでいきたいと思います。

  • ※ ページ上の内容は2022年2月時点の情報です。