Sansan Innovation Award 2023
Sansan DIGITALIST Innovator
INTERVIEW
- 株式会社アイデム
- 創業1971年2月
- 従業員数958名(2023年8月31日現在)※全雇用形態含む
- 事業内容求人サイト運営、採用サイト構築サービス・採用管理システム運営・提供、求人フリーペーパー発行、新聞折込求人紙発行、新卒&キャリア人材紹介、外国人採用支援・人材紹介、ビジネスセミナー・研修
DXは社内の「当たり前」を覆す。
時間の使い方が180度変わる
未来を実現していきたい
時間の使い方が180度変わる
未来を実現していきたい
受賞企業代表
石橋 佑子 氏
リモート社会推進室
営業改革推進チーム 係長
取り組み前にはどんな課題があったのでしょうか。
私の所属するリモート社会推進室は、コロナ禍を機に、BtoBマーケティングによる営業強化とデジタルツールを活用した営業活動の効率化をミッションとして設立されました。アイデムでは、創業以来、地域密着型の営業体制を敷いており、一人の営業担当者が受け持つエリアを非常に細かく設定していたので、担当するお客様の数も膨大でした。また、スマートフォンによる情報収集が一般化するとともにウェブを基軸とする商材が増加。各営業担当者への負荷はさらに大きくなり、属人的かつアナログな営業文化からの脱却や顧客情報の一元管理、営業生産性の向上が急務となっていたのです。
部署設立当初から喫緊の課題として取り組んだのは、リモート、対面といったさまざまな接点において、マーケティングからセールスまですべての手法を融合した新しい営業スタイルを構築することでした。そのためには、顧客情報を一元管理して、さらにMAツールを活用し、効率的な営業活動ができる体制を築く必要がありました。
すでに導入していたSFAツールによって企業単位での情報管理はある程度進んでいましたが、そこにひも付く人物情報の蓄積や情報の最新化までは営業現場に浸透しておらず、不十分な状況でした。また、当時はMAツールを使ってメールを配信するためのメールアドレスの入力や更新も手作業で行っていたため、配信数も伸びませんでした。人に関する正確な情報がなければ、MAツールの有効活用はできません。そのため、営業担当者の手を煩わせることなく、最新かつ正確に顧客情報を保てるデータベースを構築するための基盤となるツールを探していた時にSansanに出会いました。SansanとSFAツール、MAツールを連携させることで、効率的な営業活動を実現できる体制が構築できました。
どのような変化が起きましたか。
手応えを感じるようになったのは、営業職のほぼ全員がSansanを使うようになった、導入から1年後くらいからでしょうか。Sansanなら、いつも業務で使い慣れているスマートフォンで紙の名刺を撮影するだけで正確にデータ化できるので、これまで手作業による入力でなかなか進まなかった人物情報の蓄積が一気に進みます。その容易さは、使う側にとって大きなメリットだったようで、「便利になった」という声がよく耳に入ってくるようになりました。
自分が入力した情報だけでなく、全拠点の営業が入力したすべての情報が 見られるようになったのも大きかったと思います。それまでは各営業担当者が、自分が所属する営業拠点か、せいぜい隣接する拠点での情報を確認する程度にとどまっていたのが、全拠点から集まる膨大なデータを利用できるようになったことで、思いがけない有益な情報を得て、お客様への提案、さらに売上アップにつなげられたというケースが増えていきました。
DX推進のために心がけていたことはありますか。
営業現場の一人ひとりに自分ごととして意識してもらうためには、いつ、何を、どのように伝えれば良いか。情報を発信する上では、こうしたことを常に意識して、営業現場とは積極的に直接コミュニケーションを取るようにしていました。
大きな推進力になったのは、社内に協力者がいたことです。デジタルツール を含め、新しい手法を取り入れることを得意とする社員たちが社内インフルエンサーとなって、「Sansanを使ってみてこんなに便利だった」「こんな新しい使い方ができた」と発信してくれたのです。オンライン商談上での名刺交換の方法を解説した動画を作ってくれたこともありました。うれしい驚きだったのは、そうした情報を多くの社員が社内でさらに共有してくれたことです。
やはり営業職の社員には、同じ営業職の社員が発信する情報の方が実感をもって伝わります。コロナ禍で商談がほぼオンラインになった時には、デジタル名刺の使い方に関する情報に大きな反響がありました。
受賞についての感想と今後取り組みたいことをお聞かせください。
素直にうれしかったです。リモート社会推進室にとってはゼロからの取り組みでしたし、これまで関わってくれた多くの社員の努力が評価されたことがとてもありがたかったですね。
DXは、社内の「当たり前」を覆し、新しい風を運んでくるものだと私は思っています。同時に、古くから残る社内文化や、これまで積み上げてきたものの良さを気付かせてくれるものでもありました。社内インフルエンサーの活躍など、社内文化の新たな一面に気付けたことも、Sansanの活用推進のおかげだと感じています。
もう一歩、営業DXを前に進めるためには、各営業担当者が持っているノウハウや知見を全社で共有する仕組みを、さらに整える必要があります。今後はそうしたナレッジに、蓄積された人物情報を掛け合わせることにも挑戦したいと考えています。今まで営業担当者がお客様のことを調べるために使っていた時間を、お客様が抱えている課題の解決方法を考える時間に使えるようにしたい。それができれば、より効率の良い営業が可能になり、生産性も高まるはずです。そんな時間の使い方が180度変わる未来を実現していきたいと思っています。
顧客の人物情報が
4年間で約16倍に増加しました
4年間で約16倍に増加しました
鵜沢 英介 氏
リモート社会推進室 室長
どのような点を大事にして取り組みを推進されたのでしょうか。
私は、リモート社会推進室の室長として、営業DXを指揮しています。私たちが大事にしているのは、実際にツールを活用するメンバーの目線で本当に有益なのかを基準にすることです。その上で、現場がいかに自発的に活用できるか——「やらされている感」が出ないように、ポジティブな空気を作っていくことを意識して、リモート社会推進室から情報を発信しています。SFAツールに蓄積された顧客情報の量をグラフにするなどして可視化し、現場に発信したのも、その一環です。自分が取り込んだ名刺が月に10枚だったとしても、全社で見ればたくさんの情報が集まったデータベースの一部になっていることを知れば、自身が貢献していることや今後の活用イメージが湧きますよね。
同時に、現場の社員との積極的なコミュニケーションも大切にしました。現場がどこにメリットを感じ、不満を抱いているのか、真摯に話を聞くことはとても必要なことだったと思っています。
社内にはどんな変化が起きました か。
営業担当者の手作業による入力に頼っていた頃は1年で2000件ほどしか集まらなかった顧客の人物情報が、Sansan導入後、1年も経たずに5倍程度に増えました。しかも、スマートフォンで名刺を撮影するだけで、SansanからSFAツールに連携されて正確な情報が自動的に入ってくるようになりました。これまで営業担当者の手元にあった顧客情報が一元管理でき、そのデータベースを全社で利用できるようになったことは、非常に大きな変化だったと思います。営業面では、どの営業担当者が誰と接触しているかが可視化され、横の連携がしやすくなりました。
マーケティングの観点からも、対象となる顧客情報を蓄積できたことで、多彩かつ効率の良いアプローチが可能になりました。企業単位の情報があっても、メールを送るとか、電話をかけるとなれば、人の情報が欠かせません。MAツールを活用したアプローチ対象者の情報は、Sansan導入後の4年間で約16倍に増加。また、人単位での役職や行動履歴が把握できるようになり、単なるメール配信にとどまらない、MAツールを軸にしたマーケティングが進んでいきました。
こうした精度の高いデータベースが構築されたことで、営業担当者がこれまで自分ではなかなか当たりきれていなかったお客様との接点が持てるようになりました。さらに、お客様の興味・関心を知ることで、当たるべきお客様に、当たるべきタイミングで接触できるようになり、営業生産性が非常に上がったと感じています。ここ数年、お付き合いのなかったお客様との取引を復活させることができたという話も聞くようになりました。
今後、リモート社会推進室で取り組みたいことを教えてください。
今回の受賞を機に会社の名前が世に出ることで、社外からの反響もいただいていますし、社内的にも私たちが進めているMAツールの活用やデータの連携など具体的な業務の中身を知ってもらえる良い機会になりました。
ただ、まだできることは多いと感じています。今は時間や工数がかかっている業務を、現場の社員が「効率が上がった」「短時間でできるようになった」と感じてくれるように、一つひとつ改善していかなければなりません。私たちは、現場が楽しんで使えるか、明るい未来を描けるか、会社の変化を感じられるか、その変化をポジティブに捉えられるかを常に考えてDX推進に取り組んでいます。
デジタルツールの活用に楽しみや魅力を見出してくれる社員が増えれば、現場で自発的に進めてくれる人が自ずと増え、全社的なDXが進んでいくはずです。将来的には、次世代が推進担当になって、私ができなかったことを彼らの視点で進めてくれることに期待をしています。
過去の年間売上を4カ月で達成。
大きな成果が出ています
大きな成果が出ています
遊佐 大輔 氏
東⽇本事業本部
シニアマネージャー 兼
新宿営業所マネージャー
営業現場はどう変わりましたか。
私は、都心地区の営業責任者と新宿営業所のマネージャーを兼務していますが、Sansanを導入する前の営業は、属人的で、いわば個人での戦いのような状況でした。個で数字を追いかけることしかできなかったとも言い換えられます。名刺もおのおのが管理していたので、他の営業所の営業担当者がどのような名刺を持っていて、誰と会っているのかが分からず、新規顧客の開拓に使うのもウェブサイトの情報だけ。各地域の電話帳を頼っていた時代もありました。
アイデムには複数の営業拠点がありますが、Sansanの導入で全社による横の連携ができるようになったことは大きな変化でした。拠点間で情報をリアルタイムで共有し、その共有されたデータを基に事前準備ができるようになった結果、商談の質が上がり、それが受注率の向上につながりました。社内の営業所間での会話も増えたように思います。
また、SFAツールとSansanとの連携によって、特に複数の拠点を持つお客様へのア プローチの精度が上がりました。自分のいる営業所でA支店との取引がなくても、他の営業所でB支店やC支店と取引があることが分かれば、社内の営業担当者と事前にやりとりすることで、現在の取引状況や先方の課題などが把握できます。そうすれば、実際にA支店を訪問する際、精度の高い商談ができますし、他の支店の役職者などとの接点も有利に働きます。拠点の多い企業へのアプローチほどデータが有効活用できる上、そうした企業は規模が大きいので売上が上がりやすい。全社での情報共有は非常に有効に働いていると思いますね。
どのように変化が起きていったのでしょうか。
1年ほどかけて、デジタルツールを中心とした営業改革を行うというプロジェクトの一環として、ある程度トップダウンで、営業組織へのSansanの浸透を進めていきました。私自身、使ってみると 非常に便利だと感じたため、営業担当者みんなにSansanを身近に感じてもらえるように、活用方法などを自分から積極的に発信することを心がけました。
その結果、多くの担当者が使い方に慣れて、成功体験を積むことで、徐々にデジタルツールをベースとした営業活動に変わっていったと思います。MAツールを活用することで配信したメールの開封率も10倍ほどに増加。導入以前は、施策を打っても待ちの状態でしたが、営業部隊がその結果を受けて追いかけられるようになったことで、以前の年間売上を4カ月で達成するなど、大きな成果が出ています。
今後はどのようなことに取り組みたいですか。
私自身が実感していることですが、Sansanは営業のみならず、戦略や戦術を考える立場にとっても欠かせないものになっています。以前は、営業担当者にアドバイスをしたくても、お客様の情報を得るには、営業に同行するか、各担当者に聞いて回るしかありませんでした。それが今は、同行しなくてもパソコン1台で数百名単位の情報が得られるため、効率良くアドバイスができるようになりました。
営業には情報と個々の能力の両方が必要です。社歴の長い人間は、個々の能力で戦ってきた部分が大きいと思いますが、これからは精度の高い情報をいかに個々の能力に融合していくかがますます大切になっていくはずです。インターネットの普及によって、同業他社との差別化が難しくなっていく中、いかに 精度の高い情報をキャッチして営業に生かせるか。そのための情報共有に力を入れていきたいと思っています。
人材に関わる会社だからこそ
DXの推進によって
自身の仕事を変える必要がある
DXの推進によって
自身の仕事を変える必要がある
羽沢 洋樹 氏
東日本事業本部
シニアマネージャー
今回の受賞をどう受け止めていますか。
私が所属している営業部と、石橋が所属するリモート社会推進室は常に情報共有しながらDXに取り組んできました。近くで彼女の頑張りを見ていたので、受賞は大変うれしいですし、とても名誉なことと感じています。全社的にSansan活用の機運が高まりましたし、もともとは個人が紙で管理していた名刺を会社の資産にするという観点が生まれたこと、そこで集まった情報をいかに成果の最大化につなげていくかという考え方が浸透してきたことも、今回起きた大きな変化だと思います。
アイデムがDX推進に取り組んだきっかけの一つがコロナ禍でした。世間一般にそうだったように、それまで当たり前に行っていた業務が、さまざまな側面で見直さざるを得なくなると同時に、これまで以上の生産性や営業効率の最大化が求められ、DXの推進は必然でした。取り組みを進めたことで、情報共有の質とスピードは劇的に改善。個々の営業の頭の中や手帳の中にしか控えられていなかったお客様の情報が全社的に可 視化されたこと、そしてそれを横の連携でいかに活用していくのかという観点が育っていったことは、非常に大きな進歩だったと思っています。
今後の展望を教えてください。
アイデムは、雇用機会を創出することを通じ、地域社会に貢献することを目指して事業に取り組んでいます。1971年に新聞折込求人紙の発行から始まり、現在は人材の採用のみならず、戦力化まで含めたコンサルティングなど、総合人材情報サービス企業として変化を続けています。
「人と企業のトータルコミュニケーションづくり」という企業スローガンを掲げるアイデムは、「働く感動を社会に広げる」をミッションに、「誰もが輝いて働ける社会の実現」をビジョンにしています。これらを実現するには、自社で働く社員自身が輝いて働き、働く ことで感動を得ていることが大前提です。そうした意味でも、働きやすさや働きがいに密接に関わるDXが果たす役割は非常に大きいと思います。
日本の人口構造を考えれば、将来、生産年齢人口の減少が大きな問題となることは明らかです。労働力の需要と供給のバランスは大きく崩れ、どの企業にとっても事業の継続・発展のために人材を確保することはより大きな課題となるでしょう。
こうした中、仕事という情報を社会に提供することで社会貢献をするアイデムが、企業に適した人材を提供していくためには、今まで以上に自らの仕事の進め方を変えていく必要があり、そこにDXは欠かせません。DXは、アイデムが仕事という情報を社会に提供することによって、社会貢献する上で不可欠な手段だと考えています。今回の受賞は大きな一歩ではありますが、会社全体で見ると、社内業務や基幹システムなど、改革が必要な箇所はまだあります。今後もDXを進めて、さらに効率を高めていきたいと思っています。
- ※ ページ上の内容は2024年6月時点の情報です。